『恋ノ岐川』なんと響きの良い言葉だろうか。沢登りを始めた頃から憧れの沢の一つである。
ようやくメンバーが揃い実行することができた。7年前は、女性3名含む7名で遡行したと聞くが、今回は野郎ばかり総勢5名であった。
恋ノ岐川は奥只見の奥、群馬県境に鎮座する平ケ岳にその源を発している川である。
奥深い山懐で生まれた水は、奥只見湖、田子倉湖、只見川を経て阿賀野川と合流して日本海に注いでいる。
地図上は恋ノ岐川となっているが、様相は渓谷、滝や淵、ゴルジュやナメが続く沢で、日本でも有数な美渓の1つなのだ。
≪9月14日(日)≫
早朝に新潟を出発し、恋ノ岐橋に荷物を下ろし、車1台を下山口の鷹ノ巣駐車場に回送したのだが、2週間前の平ヶ岳山行の時には10台程しか止まっていなかった駐車場が満杯で、道路上にも溢れていた。我々もだいぶ先にスペースを見つけデポすることができた。恋ノ岐橋に戻り準備を始めたが先行パーティーが1組出発していった。 |
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遡行図(青線が沢の登り、赤線が尾根下山) |
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奥只見湖の縁をくねくねと巻くR352、ヘアピンのように大きくカーブしたところに架かるのが恋ノ岐橋、その下から入渓しました。 |
入渓点付近の渓相、比較的明るい沢で、清く澄んだ水が流れていました。ところでこのザックの大きさを見てください。15〜20Kgの1泊装備担いでの沢歩きは重労働です。 |
恋ノ岐沢は2級の沢で、技術的には易しい部類ですが、2日かかるロングコース、このようなヘツリ歩きが延々と続きます。 |
入渓後は素晴らしい滝やナメ床が続き我々を飽きさせない。
全体には小滝の連続で、楽しみながら難なく超えて行けるのだが、時々困難な滝も立ちふさがってくる。
夏で有れば滝壷を泳いででも滝に取り付くのだが、この時期水は冷たく、腰まで浸かっただけでも震えが止まらない。
やむなく小さく高巻くのだが、巻道がしっかり付いており楽々であった。この辺はメジャーな沢のありがたいところだ。
支沢分岐に出会う度に遡行図・地形図・GPSで位置確認をしながら進み、オホコ沢出合の先でテントを張る予定であったが、荷物が重いせいか時間がかなり押していた。暗くなってしまうと身動き取れなくなってしまうので、適当な幕営地を探しながら遡行した。 |
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道なき道を歩くと言えば格好良いですが、どこも道、歩けるところが道なのです。 |
深い淵、瀞(とろ)にやって来ました。大きい滝はほとんどありませんがこのような小さな滝は数えきれないほどたくさんあります。さて、どっちを歩こうか。 |
左側をヘツリました。うっかりするとドボンが待っています。冷たいので落ちたくない。 |
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清水沢出合の前の2段10mの滝、美しさに見とれてしまいました。 |
でもこの程度の滝なら足先が濡れる程度で、難なく登れます。 |
ナメ床、ナメ滝と気持ちの良い沢歩きが続きます。ナメは厳しい沢の中でも癒される場所の1つです。 |
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5mのトイ状滝、夏なら水の中をじゃぶじゃぶ歩いて正面突破なのですが、濡れたくないが勝って、高巻きました。 |
川原でのランチ風景。日の当たる場所を探してゆっくりと休みました。亀の甲羅干し。 |
まだ全長の3分の1しか歩いていません。小滝を乗り越え乗り越えまだまだ続きます。 |
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連瀑帯を行く。この沢はイワナの宝庫でもあります。でも今回は釣どころではありません。 |
おやおや、曲芸まがいのこともやってのけていますね。素晴らしいバランス感覚です。 |
次々に滝が現れ、飽きさせてくれません。恋ノ岐沢は日本有数の美渓なのです |
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やがて少し広いゴーロ帯に出、森との境にわずかなスペースを見つけて幕営することにした。
薪を集めたり、テント2つを設営したりと忙しく働いていると、釣師が通りがかり、黄金色に輝く天然岩魚を見せてくれた。
岩魚の塩焼きを食べたかったが、我々の今日のメニューは豚汁と饂飩、沢登りの楽しみである焚火をしながら呑み食らう。
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8×15m幅広滝、落差8m、長さ15mの滝と言う意味です。野営地はオホコ沢出合付近と目論んでいましたが、どうやら皆に疲れが見えてきました。 |
テントを張れる場所を探しながら歩き、オホコ沢出合には届きませんでしたが、今日はここで泊まります。川原での焚火、酒を飲み交わしての団欒、至福のひと時でした。 |
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≪9月15日(月)≫
翌朝は定番卵入り餅雑炊で腹を温め早朝に出発した。
最初は濡れるのは膝までのつもりが、いつしかエイヤと腰まで浸かってみたがやはり寒い。震えこそしないがなかなか暖かくならない。
ウエットパンツを持ってこなかったことを悔やむが後の祭りである。
1時間ちょっとでオホコ沢出合に到着、確かにここには幕営適地が数か所あった。先行したパーティーはここで泊まったようだ。
しかし、ここで思案、恋ノ岐本沢を遡行するにはまだまだ時間が係り、下山時間も遅くなる。昨日の強行軍で身体も悲鳴を上げている。今回は、ルートを短縮してオホコ沢に入る事とした。
ここオホコ沢は増水時のエスケープルートとは言え、小滝が次々に現れ、なかなかの美渓で楽しませてくれる。
GPSと遡行図で位置確認をして三俣に到着。なんと真中の沢に赤いリボンが揺れていて、おいでおいでをしている。
地図で間違いないことを確認し、そこを進むとポッコリと台倉清水に出た。ここは、平ケ岳鷹ノ巣コースの水場の1つである。
一登りして登山道に出て、広場でお湯を沸かしてゆっくりと早めの昼食を取った。
2週間前と違い大勢いの登山者が立寄って行く。その中のかなりの人が、有名な東京の沢専門の某山岳会の人達で、平ケ岳のあちこちの沢を詰めて合流する集中登山とか。物々しい装備の幾グループもが追越していった。 |
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恋ノ岐沢を登り詰めれば平ケ岳直下の池ノ岳に突き上げるのですが、皆の疲労が大きいため、衆議の結果、今回はオホコ沢経由で尾根に上がることにしました。オホコ沢もきれいな沢でした。 |
水が細くなり源頭部が近くなりました。この先が登山道の水場、台倉清水です。そこで登山道と合流します。長い長い沢歩きでした。 |
稜線に出て、沢装備を解きゆっくりと休みました。疲れました。少し進むと燧岳が目の前に大きく見えました。
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下山は一般登山道ではあるが、名にし負う平ケ岳鷹ノ巣コース、辛い辛い下山であった。
休み休み、急な岩場や痩せ尾根を注意深く降りて行った。最後の一本橋を渡って林道に出た時は本当に胸を撫で下ろした。
そして、デポしておいた車一台に野郎5人とデカザック5つを乗せ、ぎゅうぎゅう詰めの状態で出発点の恋ノ岐橋まで移動。
そこからは、2台に便乗して、銀山平の貸切り状態のカモシカの湯で体を温め帰路についた。
今回は、恋ノ岐沢を全踏破はできなかったが、次回は暑い時に来て、滝壷を泳いででも直登をして恋ノ岐本沢を詰めたいと思っている。
会員の皆さんへ
沢登りは日本固有の登山技術であり、山登りのあらゆる要素を凝縮していると言っても過言ではありません。
とっつきにくい山の登り方ですが、1度経験したら病み付きになることは必至です。蒸し暑い夏に涼しく遊べる楽しいスポーツです。
我々の技術では基本的には初級の沢しか入りません。無理は絶対に避けています。
現在、楽山会で沢を楽しんでいる仲間はおよそ10名くらい。興味のある方は是非、参加をお待ちしています。
おわり |
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