≪紀行文≫ |
|
|
〜〜〜〜〜〜 |
3年前に黒部五郎岳と薬師岳の山行を行った。そのときは太郎平小屋からのピストンだったので8人しか申し込みがなかった。一日で20キロ歩くなんて難しすぎたかも、ならば黒部五郎小舎に泊まれば少しは楽かと。でも黒部五郎小舎は北アルプスの最深部、そこから帰るのはやはり強行軍、それならついでに笠ヶ岳にも登ろうと、一泊多めにとれば割と楽に登れるのではないかと計画を立てた。申し込みは17人で安堵した。5日間の北アルプス大縦走だ。
予定日が近づくにつれ最初の3日間は晴れ予報だったが4日目と5日目が曇り時々雨の予報、でも最近の天気予報はころころ変わる。いいほうへ変わってくれと願って当日を迎えた。キャンセルが2名出て私を入れて16名での山行となった。
バスは現地滞在の予定が一度新潟に帰って、4日目の夜にまた戻ってくるという。まあ、問題はない、悪天候予報が好天予報に変更になることを祈り、多少雨が降っても前進あるのみと考えた。 |
≪一日目≫
当日、新潟を出発したバスは、ほぼ予定通り登山口の折立に着いた。この日は日曜日、駐車場はほぼ満車だった。この日帰る車がほとんどだろう。しからばすれ違いの登山者が多いに違いないと思った。
準備をして急登を歩き出す。樹林帯の中の急登、大きな石や木の根っこ、景色の見えない、風も感じない辛い登りが約2時間続く。
そしてベンチのたくさんある三角点に到着、森林限界を超えた。ここで昼食、昼食の後は左に薬師岳を望み、右に有峰湖を見下ろせる。天気がいいので前方には北ノ俣岳方面もよく見えた。 |
|
折立の登山口 |
|
|
|
樹林帯の中の急登 |
アラレちゃん広場で休憩 |
三角点のベンチに到着 |
石のゴロゴロした道、6月に来たときからだいぶ整備されていた。気持ちのいい風を感じながらルンルンと進んでいく。
やがて太郎平小屋に到着。 |
|
|
|
広く緩やかな登り |
まだまだ続く尾根伝いの道 |
太郎平小屋はもうすぐ |
この日は150人を少し下回る混み具合、6月のときは他の宿泊者はなかったのに山登りの最盛期はしかたがない。でも布団は一人一枚、夕食も一番目の17時からだった。
外は寒いので談話室でビールを飲みながら夕食を待った。
明日も晴れるという予報にみんな嬉しそうに、美味しく夕食を食べたのでした。ただ私は4日目の天気予報が気になり、有料気象サイトに契約している企画部のTさんに電話を入れ天気予報のチェックをお願いした。
夜、起きて空を見ると満天の星、富山方面の夜景もはっきりと見え翌日の晴天を確信した |
|
夕食 |
≪初日に出会えた花々≫ |
|
|
|
|
|
≪二日目≫
朝食は5時、5時50分に玄関の外に集合と、しかしみんな早く準備をして5時45分に出発した。 |
|
|
朝食 |
|
朝日に照らされた黒部五郎岳 |
集合写真 太郎平小屋 |
小屋から15分くらい木道を歩いていると雷鳥が一羽、我々の足元を横切った。朝から、こんな晴れた日に雷鳥に会えるなんて運もいいし、この先いいことがあるような気がした。
森林限界をすでに超えているので見晴らしがいい。朝日に照らされた薬師岳を背後に、左には水晶岳、鷲羽岳が、そして左下には雲ノ平、右側遠くには加賀白山も見えた。そんな風景を青空の下で楽しめる天空の散歩道だ。
傾斜も緩く、疲れを感じさせない北アルプスで私が最も気に入っている場所のひとつを多くの会員に知っていただきたいと、ああ、晴れてよかったと嬉しく感じたのでした。「もう少し早く来れば高山植物がたくさん見られたのに。」との声、「6月がいいですよ。雪もあるけど稜線の雪はほぼ解けて、解けたところから春の高山植物と夏の高山植物の両方が楽しめますよ。」「でもねえ、雪はいやよ。」「新潟の人が何をいいますか。」そんな会話をしながら天空の散歩道を進んだのでした。 |
|
|
|
ゆるやかな登り道を歩く |
360度の大展望で休憩 |
気持ちのいい木道歩き |
|
|
|
北ノ俣岳山頂 |
北ノ俣岳山頂で山座確認 |
天空の散歩道 |
北ノ俣岳を過ぎたころから笠ヶ岳も大きく見えてきます。笠ヶ岳、乗鞍、御嶽と三山が重なって見えるのは圧巻です。前には黒部五郎岳が大きく、威圧感が感じられます。
|
|
左より黒部五郎、笠ヶ岳、乗鞍、御嶽 |
中央が水晶岳 |
その黒部五郎岳の麓に来ると岩場の急登、いままでの緩やかな道とは違って我慢のしどころです。一歩一歩足を進めて黒部五郎岳の肩に到着、このころ風も出てきて、ガスが立ち込めてきたので、そこにザックを置いて空身で山頂を目指し、戻って昼食にすると指示を出しました。
山頂で集合写真を撮り暫し休憩、この瞬間だけがガスのため景色の見えない時間だったのです。山頂からの大展望を見ることができなかったのです。ここまで来てまことに残念。 |
|
|
|
赤木岳の岩場 |
集合写真 黒部五郎岳山頂 |
山頂を後に、黒部五郎岳の肩で昼食、そして五郎のカールを下るのでした。大変長い下り道です。振り返ると先ほどまでガスに包まれていた山頂を見ることができます。 |
|
|
|
下山にかかる |
黒部五郎山頂にガスが湧いてきた |
黒部カールで休憩 |
やがて道は樹林帯の中の平坦な道になり草原に降りると黒部五郎小舎に到着です。50人ほど収容の小さな小屋ですが、この日は充分なスペース、布団は一人一枚、空きスペースも多く30人くらいの泊り客だったよう。
ここで翌日の夕方から爆弾低気圧になり大荒れの天気になることを知らされました。
予定を変更して翌日はわさび平小屋まで一気に下ることを考えました。大雨になれば笠新道も小池新道も鏡平小屋から下は通行止めになるのです。そしてその雨は数日間続くということでした。
こんなに天気がいいのに、明日は雨の中、強行軍の行程になりそうと、「ゆっくり、のんびりのアルプス」が強行軍のアルプスになるようで憂鬱な気分になりました。
夕食は4時半、揚げたてのトンカツはみんなが美味しいと、まだみんなには翌日の予定を言ってはいませんでした。その日の夜、布団の中で考えました。もし翌日も晴れて時間通りに三俣蓮華岳に登れれば、あとは下るだけ、一気に新穂高温泉まで降りようと、例え雨の中の行進でも、そのあとゆっくりと温泉に浸かったほうがいいと。でもはたして当日予約で16名も引き受けてくれる宿なんかあるか、しかも今は夏休みのベストシーズンなのに。 |
|
|
|
黒部五郎小舎が見えてきた |
夕食 |
夕食風景 |
≪二日目に出会えた花々≫ |
|
|
|
|
|
≪三日目≫
長い一日の始まりです。朝食は意外と早く4時15分にアナウンスがありました。昨日の予定では4時半だったのに。
食事の後、集合写真を撮り、悪天候予報のためこの日下山するとみんなに言って、小屋を5時20分に出発しました。 |
|
|
朝食 |
|
黒部五郎を後にする |
集合写真 黒部五郎小舎にて |
青空の下、石のゴロゴロするいきなりの急登、一歩ずつ足を進めます。
登り切ると景色のいい広場で休憩、黒部五郎、水晶、鷲羽、薬師岳の絶景に見とれました。そしてハイマツ帯をトラバース、次に三俣蓮華岳への登りです。 |
|
|
|
ハイマツの中を進む |
黒部五郎小舎を登り切ったところ |
三俣蓮華岳への登り(後ろは黒部五郎岳) |
その山頂で休憩、今度は槍ヶ岳、穂高連峰が大きく目の前に広がります。雲ひとつない雄大な絶景です。その雄大な景色を見ながら双六岳まで進んだのでした。本来ならこのあたりは時間をたっぷりとり、景色を楽しむコーヒータイムの予定でしたが、この日は集合写真を撮り、双六小屋まで急な下りを駆け下りたのでした。この感じだと明るいうちに新穂高温泉まで下れると確信しました。 |
|
|
|
後ろは薬師岳 |
後ろは黒部五郎岳 |
三俣蓮華岳山頂 |
|
|
|
左より赤牛岳、水晶岳 |
槍ヶ岳、穂高連峰 |
360度の景色に見とれる |
|
|
双六岳山頂にて |
|
集合写真 双六岳 |
双六岳からの下り |
何度かケータイを試しましたが繋がりません。双六小屋でこの日の予約をキャンセル、するとこの日の宿泊はすべて断って、山から下りてもらうと、やはり夕方からの悪天候はかなりのものなのですね。衛星電話を借りて企画部のTさんにTEL、新穂高温泉の宿の手配と上信観光のバスの変更をお願いしました。
宿はできるだけロープーウェー駅の近く、暗い夜道で雨の中、宿を探すのはいやですからね。結果は鏡平山荘の衛星電話から聞くと伝えました |
|
|
どんどん降りる |
|
槍ヶ岳へ続く道(2260 S/M) |
ひっそりした双六小屋
(この日は翌日が悪天候のため宿泊禁止) |
そこからは左に槍ヶ岳、穂高連峰の雲一つない絶景を楽しみながらの尾根歩きです。もう少し時期が早ければお花畑にいろいろな花が咲いているところです。
弓折乗越から急な下り坂です。下に鏡平山荘が見えているのですが、ずいぶん辛い下りです。そして鏡平山荘で遅い昼食です。
この小屋でようやくケータイが繋がりました。企画部のTさんと連絡を取り、宿もバスの手配も完了との知らせ、宿の料金は割引にしてもらったと、安堵しました。これで今晩は温泉にも浸かり、美味しい旅館飯を食べられると。宿代は少し高いのですが、しょうがないと。企画部のTさんには感謝です。
みんな鏡平小屋でカレーとかラーメンを頼み、暫しの休憩です。ここからの小池新道は長いのですが、よく整備されていて歩きやすく、大きな石もゴロゴロしているのですが浮石がありません。明るいうちに下まで、そして雨の降る前にと、少しスピードを速め、休憩も45分おきにと、もちろん後ろをチェックして誰も遅れないかと。 |
|
|
|
休憩 奥は鷲羽岳、その下に双六小屋 |
まだまだ青空なのに、夕方から雨だと |
鏡平山荘を出発 |
やがて道は沢沿いの道、そして沢の中の道へと、すれ違う登山者はいませんでした。
そして林道に出るとわさび平小屋はすぐそこです。わさび平小屋で休憩、すると雨がポツポツと、あと一時間大降りにならないでくれと願い林道を新穂高温泉まで下ったのでした。
宿はロープーウェー乗り場のすぐ隣のホテル穂高です。ホテルまで雨は降りませんでした。あのポツリポツリは何だったのだろう。こうして12時間に及ぶこの日の行程はまだ明るいうちに終わったのでした。
雨は私たちが宿に入ってしばらくすると降り出し、豪雨に変わっていったのです。そして、西日本では特に九州では大災害に発展したのでした。
|
|
青空がなくなった。まもなく雨だろう |
17時20分、宿に入り、チェックイン、そして部屋へと、10畳の和室4部屋に分かれ、19時の夕食までゆっくりと温泉に浸かり、今回の山行の疲れを癒しました。
夕食はいろいろな料理もあり話に盛り上がります。20時に部屋に帰り、しばらく雑談ののち暖かい布団の中に入ったのでした。 |
≪三日目に出会えた花々≫ |
|
≪四日目≫
朝起きてみると、相変わらず雨が降っていた。朝食後ロビーに行ってみると多くの登山者、何人かに聞いてみると、昨日双六小屋まで行って宿泊を断られて、しかたなく、このホテルまで帰りついたと。この近くには宿はなく、ほかの宿はかなり歩かなくてはいけません。
私たちのバスは新潟を5時に出発して10時頃到着予定です。着替えがないので浴衣姿でバスを待ちます。部屋は10時までです。
その10時にバスが来て、大急ぎで着替えを済ませ、松本経由で帰ります。
バスは折り返しなので運転手2人でした。一日早いので運賃は増額しないとのことでした。振り返れば3日間の山行だった。3日間ともよく晴れてくれた。その3日間で黒部五郎岳、三俣蓮華岳、双六岳と走破して、前日は黒部五郎小舎から新穂高温泉まで歩き通した。
こんなはずではなかったけど、大変貴重な体験、参加者の皆様、ほんとうにご苦労様でした。雨の中、松本まで出ると雨はやみ、長野自動車道に入ります。また、今度こそ、ゆっくり、のんびりのアルプスを企画しますから、また参加してくださいね。これに懲りず。 |
|