≪紀行文≫ |
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〜〜〜簡単じゃなかった3000m峰〜〜〜 |
昨年計画するも天候不順で実行できなかった南アルプス南部の3000m峰三座縦走。
会の先輩から頂いた情報をもとに、椹島を起点に時計回りで聖岳、赤石岳、荒川三山と巡る4泊5日の山旅。
・・・という計画だったが、台風12号の襲来で計画変更を余儀なくされる。
■一日目/晴れ
関越道、首都圏中央、東名、新東名と順調に走って新静岡ICへ。
しかし、そこから畑薙第一ダム手前の臨時駐車場まで狭くてカーブが多い山道が長く続く。
しかも、落石した小石が道の中央まで落ちている場所があちらこちらに。
「しまった、給油を失念した」どんどん山の中に入って行くが、ガソリンスタンドが無い。
復路を考えると油の残量はギリギリ、手に汗を握りながら省エネ運転に徹する。
井川地区でガソリンスタンドの看板を発見、163円/?と少々高いが笑顔で給油。
臨時駐車場に駐車し、入山手続きをして椹島行きのバスに乗り込む。
椹島の標高は1100m少しでも高度純化して欲しいと願いながら眠りにつく。 |
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畑薙第一ダムの臨時駐車場 |
椹島ロッジに到着 |
安全を祈念して一人で乾杯 |
■二日目/晴れのち曇り
椹島から臨時駐車場行きのバスに乗って聖岳登山口で下車。
いきなり約250mの急登、3リットルの水が入ったザックが肩に食い込む。
汗をかき易いから水をたくさん積むのか?たくさん積むから汗をかくのか?どっちなんだと今回も考える。
トラバース気味の登山道を進んで聖沢吊橋へ、高度感はないが薄い敷板がミシミシと音をたてて怖い。
橋を渡った後の約700mの急登が本日の肝。
展望がない、花も少ない、こんな登り嫌だ、こんな山嫌だと恨み節を繰り返しながら高度を上げる。 |
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聖岳登山口へバスで移動 |
出だしから急登に苦しめられる |
高度感はないが怖かった吊橋 |
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左奥が聖岳だろうか |
終盤、倒木の間も歩く |
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計7枚の案内板に励まされる |
滝見台の遙か下に滝が二つ |
2200mの聖平小屋に到着 |
空が見える解放感のある沢で一休み、大きな石の間を勢いよく流れる水の音に清涼感をもらう。
見落としてしまったのか?と心配した滝見台に到着、眼下の滝、大きな景観にリフレッシュする。
緩やかな沢添いの登山道を進んで聖平小屋へ、サービスのフルーツポンチの甘さが疲れた体に染み渡る。 |
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おかわりができず残念 |
小屋から200m、もう少し先で携帯が繋がる |
夕食時テレビの天気予報を見て、エ、エ〜ッ!台風12号がこっち(南アルプス)に向かっている。
このまま進路が変わらなければ早く下山した方が賢明か?布団の中で対応策をあれこれ考える。
それにしても隣のイビキがうるさい、あっちゃー!耳栓忘れた。
■三日目/晴れのち曇り
3時30分に早立ちする人の身支度音で目を覚ます、私も夜明け前の4時30分に小屋を出る。
今日のコースは累積で上り1200m、下り1100mとハード。
まずは聖岳山頂までの700m、暗い中ヘッドライトを点けてゆっくり足を運ぶ。
空が明るくなるとお花が目に留まる、薊畑分岐手前のマルバダケブキの群生に声が出る。
2662mの小聖岳で富士山が現れる、美しいシルエットに気分が大きく高揚する。
やっぱり富士は日本一の山、人を元気にするパワーが半端ない。
山頂直下で下山してくる20人ほどの登山者とすれ違う。
未明の3時30分に小屋を出発した人が多かったこと、そのほとんどが高齢者だったことに驚く。
椹島(1100m)聖平(2200m)と二段階で高度を上げた効果か、山頂が近いのに頭痛など高山病の兆候がない。
それでも息は上がり、苦しい登りに何度も足が止まる。
「3000m峰はそんなに甘いもんやおまへんのや」(なぜか関西弁で天の声) |
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薊畑分岐の手前にマルバダケブキの群生 |
霧がはれて聖岳が姿を現す |
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富士山が登場、イヨッ日本一! |
右のピークが上河内岳、左奥の雲上に富士山 |
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小聖から仰ぎ見る聖岳 |
下山する早立ちの登山者達 |
聖岳の山頂、後方に赤石岳 |
3013mの聖岳山頂、最初に眼に飛び込んできたのは、大きくどっしりとした赤石岳。
その左後方に中央アルプスと御嶽山、これから歩く兎岳、小兎岳、中森丸山と今日泊まる百闢エ山の家が見える。
天気予想は「曇りのち晴れ」だったが完全に雲の上に出ている、雲上の景色を楽しみながら朝食をとる。 |
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A:中央アルプス、B:中盛丸山、C:槍穂、D:百闢エ山の家、E:百阨ス、F:仙丈岳、G:赤石岳 |
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険しい兎岳の斜面 |
岩肌に咲く白い花 |
兎岳山頂から聖岳を望む |
雲が湧き出す中兎岳へ向かう、400m下って200m上るがどちらも急坂で体力を消耗する。
遠くの岩肌に咲く白い花、何という花?初めて見る花に興味深々だが危険で近づけない、しかし、その花は兎岳の山頂で待っていた、花の名は「タカネビランジ」南アルプスだけに生息する固有種だと後で知る。 |
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高嶺の花の美男子です |
小兎岳から赤石岳を望む |
赤い屋根の百闢エ山の家 |
覚えにくい名前だが、先行していたご夫婦から「高嶺の花のような美男子」と教わる、なるほど上手い。
小兎と中盛丸山の上りもきつく、当初目論んでいた景色を楽しみながらの稜線散歩は何処へやら。
最後の中森丸山の登りでエネルギーのエンプティーランプが点灯、重い疲労感を背負いながら百闢エ山の家にたどり着く。
「ホンマ体力不足やで、3000mを舐めたらあかん」天の声に全く反論できず。
■四日目/晴れ
台風の直撃を警戒して今日は赤石岳に登ってから椹島へ下る、荒川岳は次回に持ち越し。
4時に小屋を出発し、コースタイム通りに歩けば14時発の最終バスに乗れる。
まずは400mを登って百阨スへ、ここからしばらくは展望を楽しみながらの稜線歩き。
右側には朝陽を浴びて重厚さを増した聖岳、左側には雲の上に出た中央アルプスと槍・穂高、そして後立山。
正面には今まで赤石岳の後ろに隠れていた塩見岳と荒川岳(悪沢岳、前岳)を望む。
朝の静けさと冷えた空気がこの景観をより一層感動的なものにしてくれる。
湧き上がるワクワク感がとまらない、たまらない。
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朝陽に染まる聖岳、その重厚感がたまらない |
雲海の上に中央アルプスと槍穂、その右に後立山 |
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百阨スからの眺望、A:塩見岳、B:荒川岳、C:赤石岳 |
右が悪沢岳、左が前岳 |
3120mの赤石岳山頂は、視界360度の大展望台。
北側に荒川三山、その後方に塩見岳、間ノ岳、農鳥岳、仙丈ヶ岳、八ヶ岳が見える。
南側に目を転ずれば聖岳、その後方に上河内岳、茶臼岳。 |
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昨日登ったA:赤石、B:兎、C:小兎、D:中盛丸山、そしてE:百阨ス |
山頂から富士山を望む |
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南側の眺望、A:赤石岳避難小屋、B:大無間山、C:上河内岳、D:茶臼岳、E:奥聖岳、F:聖岳 |
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北側の眺望、A:仙丈ヶ岳、B:塩見岳、C:荒川中岳、D:間ノ岳、E:農鳥岳、F:悪沢岳、G:八ヶ岳 |
この絶景の中にいつまでも身を置きたいがバスの時間があるため下山を決める。
荒川三山に「必ず戻って来る」と誓って赤石小屋経由椹島へのコースを下りる。
急いでいるはずなのに紀行文映えへの拘りか、何度も北沢カールの美しいお花畑に足が止まる。
赤石小屋まで下った所でバスに間に合うと確信しザックを下ろす。
聖岳と赤石岳が見えるベンチに腰を下ろし、百闢エ山の家で作ってもらったおにぎりをいただく。
山頂に立った3000m峰の二座を観ながら「よく登ったなぁ」 |
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チシマギチョウと赤石岳 |
マツムシソウと岩肌 |
コバイケイソウと尾根 |
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赤石小屋分岐から赤石岳を望む |
荒川三山は富士見平で見納め |
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富士山ともここでお別れ |
赤石小屋の前から聖岳(左)と赤石岳 |
椹島への降りで登山道を上がってくる登山者と何度もすれ違う、合計すると約20人。
「台風がやってくるのに行くの?」余計なお世話だが、その心境が理解できない。
椹島に予定より早く到着、シャワーで汗を流し一本早い13時のバスに乗車する。
14時過ぎに臨時駐車場を出るが海老名付近で1時間以上も渋滞にはまる、帰りは中央道経由が正解だったが後の祭り。
南アルプスは新潟から遠い、そして、一座一座が独立峰のようで頂上に立つのが簡単ではない。
今回は台風の奇襲を受けて慌ててしまい、余裕のない山行になってしまった。
3000m峰未踏の山は南アルプスの荒川三山、塩見岳の二つを含めて残り5座。
次回はもう少し余裕をもって景色を楽しめる山行にしたいと帰路についた。
「そんためには、まっこと気張って、体を鍛え直さねばいかんでごわす」(天の声最後は西郷どんかい) |
山行中に出会ったお花
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オニシモツケ |
センジュガンピ |
ヤマルリトラノオ |
オタカラコウ、トリカブト |
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シモツケソウ |
タカネナデシコ |
ホタルブクロ |
カニコウモリ |
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ゴゼンタチバナ |
コバノイチヤクソウ |
シナノオトギリ |
ヤマミミナグサ |
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ハクサンフウロ |
イブキジャコウソウ |
ウラジロキンバイ |
チシマギチョウ |
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タカネツメクサ |
モミジカラマツ |
ヨツバシオガマ |
チングルマ綿毛 |
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ウラジロキンバイ |
コバノコゴメグサ |
タカネヤハズハハコ |
ミヤマホッツジ |
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グンナイフウロ |
ウサギギク |
ミネウスユキソウ |
ミヤマコウゾリナ |
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