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≪7月15日≫
夜明け前、既に槍ヶ岳山頂から明かりがいくつか見えていた。
暗いうちに槍ヶ岳山荘を後にし大喰岳へとヘッドランプを点けながら歩き、中岳辺りに来ると、常念岳の左側がまぶしくなった。同時に槍ヶ岳を後ろに今歩いてきた稜線が赤く染まっていた。周辺の山々の山頂も赤く輝き始め、今日の始まりが一斉に感じられるような感覚が伝わるようだった。 |
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南岳小屋の先は自分には初めての登山道で長谷川ピークへと踏み込んでゆく。不安半分興味半分の世界だった。仲間が先行してくれて心強く何の不安も感じないまま楽しさに変ってゆく。新鮮な初めて味わう山道は楽しく心地よい。
通り過ぎてみれば北穂高岳を目のあたりにする所にいた。いったん下がりきつい岩場の急斜面をよじ登り北穂高岳山頂では歩いた軌跡を振り返った。
次の涸沢岳まであと少し、鞍部に下がり鎖に摑まりながら一気に登り上げると眼下に穂高岳山荘が見えた。 |
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≪7月16日≫
馬の背を歩く頃に明るくなるのを見越し、暗いうちに穂高岳山荘を出発した。
直ぐに急登と鎖場の連続が始まる。手元足元1歩1歩に注意をしながら慌てずにゆっくりと歩いた。
奥穂高岳ではまだ薄暗いのに数人の先行者が日の出を待ち構えていた。自分たちはここで少し休み、未踏の登山道に踏み出した。
鋭くとがった痩せ尾根を進むと下りが始まる。後ろ向きになって下がる馬ノ背では足の置き場で難しく厳しい所があり、緊張した。ここが最難関の所と仲間は言っていた。
ここからロバの耳を巻いてジャンダルムへの登りとなる。この登りは一般的には西穂からの登りが安全というが、奥穂高岳側から直登すると仲間は言う。なんとか後ろに着きながら這い上がると山頂に行けた。
とうとうジャンダルムに登ったぞ。ここでしか見られない風景に満足するまで浸り、天狗コルへと下がる。 |
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岩、鎖、ガレ場の道を下がったと思えばまた上がり、天狗岳で朝ごはんをゆっくり食べる。これから先の登山道が一望に見渡せ、西穂山荘も直ぐそこに見えるが、この先間ノ岳、赤岩岳、西穂高岳、ピラミッドピーク、西穂独標、急な岩のアップダウンと、崩れない訳がないと言っても良いような落石の危険が続く長い道のりの連続を事故無く切り抜けなければならない。気の抜けない道を歩き通し、西穂山荘についてほっとし、祝杯をあげた。 |
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