会山行紀行文 2018年
9/1(土)-3(月)
天候:下記記載
(きただけ・あいのだけ)
北岳・間ノ岳

3192m  3189m
参加者 (紀行文) 2044 S/H
No−110 グレード:B 18名
 担当リーダー 2044 S/H (男性6名・女性12名) (写真)2044S/H・2055M/K
≪コースタイム≫(天気)
≪一日目≫(曇り)
新潟駅(5:00)=北陸・上信越・中央・中部横断自動車道=白根IC=芦安(10:40-11:00)=広河原(11:40-12:20)…白根御池小屋(15:00)
≪二日目≫(雨)
白根御池小屋(5:50)…小太郎尾根分岐(8:10)…肩ノ小屋(9:00)…北岳山頂(10:10)…北岳山荘(11:45)
≪三日目≫(曇り)
北岳山荘(5:45)…八本歯のコルへの分岐(6:15)…二股(9:30)…広河原(12:00-12:10)=芦安(12:45-14:15)=白根IC=新潟駅(20:00)
≪紀行文≫
〜〜〜急登、急下りの連続する北岳、登り切ったその顔に満足感が〜〜〜

 一日目は曇りだった。涼しい1500Mの高地、広河原から歩きだす。吊橋を渡りしばらく歩くと急坂が始まる。樹林帯で展望はないが歩くごとに高度が稼げる。2時間ほど行くと道は平坦になり20分ほどで白根御池小屋に到着。その平坦な道から鳳凰三山が望めたのがこの日の収穫、夕食後はたて笛の演奏会も楽しめた。
 二日目は歩きだして10分くらいで雨が降ってきた。雨具をつけて歩くも雨はすぐに止んだ。草すべりの急登、前日同様ゆっくりと進む、やがて樹林帯を抜け小太郎尾根分岐に、ここからは緩やかなハイマツの稜線歩き、やがて岩がゴロゴロする道になると北岳肩ノ小屋に。この頃一時雨が強くなった。でもまた小雨になり岩道を進むと北岳山頂に。ガスが立ち込めて展望ナシ。その後岩道を下り北岳山荘に。天候悪化につき間ノ岳は中止した。
 三日目は雨は降っていないが景色が望めないので八本歯のコル経由とした。ハシゴやロープ、岩場の連続を乗り越え、長い河原歩きの末、広河原に到着。天気はあまり良くなかったが北岳は登りきった。

 会山行でいつも迷うのは当日の天気だ。バス会社からは遅くても二日前の夕方までに決定していただきたいと言われている。今回も天気予報は目まぐるしく変わった。でも二日前の午前中の天気予報は三日間共晴れの予想に変わってくれた。かつてない大型台風21号も日本への影響は早くても9月6日だと思われた。3日には山を降りているので影響はないと思われた。少し早いがその時点で決行を決めた。
 ところがその日の夕方に天気予報がまた変わった。悪いほうにだ。でも今回の山行は間ノ岳に行かなければ(悪天候の場合は間ノ岳中止と計画書に書いてある)3日とも半日の行動、雨の場合はこのようにしますと企画部長にもメールを入れた。返事は「気を付けて行ってください。」とあっけないものだった。その翌日、つまり前日は天気予報はさらに悪化し雨の予報になった。数人のメンバーから「ほんとうに決行するのですか。」と電話をもらった。「もちろんやります。」と強気に答えたが内心は中止すれば良かったかと心は揺れた。でも夏のアルプスでほんとうに怖いのは雨ではなくカミナリと強風だ。幸い風も弱くカミナリの予報もない。少しくらいな雨は今の季節、Bクラスの山行では問題ないだろうと、それよりあまりにも多くの山行の中止が続いている状況で、「もうあなたの会の予約は受け付けません。」となったらもっと問題だろうと、そんな思いもあった。もし三日間共雨で無残な山行になったら私にはリーダーはもうできないだろうと、クビを覚悟した。
 計画表には「かなりの悪天候」の場合は中止と書いた。多少の雨はこの限りにあらずと強気に臨んだ。ところが当日の朝、土砂降りの雨の中、ネットで予報を見てみると、なんと晴れの予報、ほっとしてバスの待つ栄PAに向かったのでした。実は前の晩、寝室の布団の中で想像していた。新潟駅でメンバーが勝手に中止を決めてバスを返すのではないかと、あるいは栄PAで私がバスに乗るとみんなが白い目で私を見つめるのではないかと、ああ、リーダーなんかやるものではないなあと、眠れぬ夜を過ごしたのでした。でも天気予報がいいほうへ変わってホントによかった。

≪一日目≫
 新潟ではこの日豪雨だった。バスに乗ってネットで見た天気予報をみんなに紹介した。まだ不安だらけのメンバーだったが、バスが新潟県を離れると雨が止んだ。芦安でジャンボタクシーに乗り換え広河原へ、そこのインフォメーションセンターの二階で昼食を食べ歩き出した。

 曇り空だが雨の降る気配はない。ゆっくりと吊橋を渡り急坂を登る。
広河原インフォメーション前から出発。遠く目指す北岳が観えます。 つり橋を渡ります

 北岳特有の厳しい急登、2時間だけ我慢と、景色の望めない樹林帯の中、ただただ前へ足を進める。うっそうとした樹林帯を2時間くらい登ると道は平坦になる。
いきなり急登の始まり 急登が続きは疲れます 崩落個所を通過

 そこから約20分で白根御池小屋に出る。その平坦な道から鳳凰三山がすぐそこに見えた。小屋に到着後受付を済ませ小屋の前の広場でビール談義が始まった。
 残念ながらバットレスは見えなかったが、それでも涼しい高地で晴れてよかったと。この日泊まるのは70人くらいか、テントも10張りほどあった。
 9月初めのこの時期、70人とは誰もキャンセルしないで登ってきたのだろう。やはり来てよかったと思った。
 我々には3部屋が用意されていた。
 夕食の後、たて笛の演奏会があった。まだ若い作曲家の演奏会だが、これがすこぶる上手い。みんな熱心に聞いていた。
 次の日も晴れてくれと期待しながら布団に入った。もちろん布団は一人一枚だった。
鳳凰三山が見えてきた。 白根御池小屋に到着 早速ミィーティング開始
盛り上がります   小屋の夕食  たて笛演奏会
≪二日目≫
 夜中に降った雨は朝には止んでいた。小屋の前で集合写真を撮り歩き出す。
 朝食
白根御池小屋 集合写真

 草滑りという急登、歩きだして10分もしないうちに雨が降り出した、雨具の着用指示を出して、またゆっくりと歩きだす。だが雨はすぐに止んだ。もう少し前の時期なら多くの高山植物のあるところ、この季節はナナカマドの赤い実くらいか。それでも時々、雲の晴れ間から鳳凰三山が望めた。

 その急登にうんざりするころ森林限界を超えて小太郎尾根分岐に出る。残念ながら直前に立ち込めたガスのため甲斐駒ケ岳、仙丈ヶ岳は見えなかった。
草すべりの急登 小太郎尾根分岐付近

 ここからは緩やかな登り、稜線歩きだ。風がないのがありがたい。やがて岩がゴロゴロした所を超えると北岳肩ノ小屋だ。
 ここで強い雨が降り出し、小屋の前でトイレ休憩をたっぷりとった。雨が降っていても風がないので歩くのに支障はない。でも休憩後はいくらか小降りになった。
クサリ場を登る 北岳肩ノ小屋に到着 雨脚が強くなってきた

 ここからは岩の急斜面を登ると北岳の山頂に着く。
 山頂ではガスがいっぱいで集合写真は撮れなかった。本来なら山頂からの眺めは絶景なのだが残念。
 各自証拠写真を撮ったあと下山にかかる。
 また岩のゴロゴロした道を北岳山荘へ進む。鎖場もいくつかあるので慎重に、濡れている岩に気を付けてと。
 やがて岩場を越えてハイマツ帯になると北岳山荘に到着。
北岳山頂が観えてきた 山頂までもう少し 山頂に到着
北岳山頂 北岳山荘に向かって下山開始 釣り尾根分岐

 小屋で受付を済ませ食堂を借りて昼食にした。ストーブで暖められた食堂での食事は冷え切った体にはありがたい。
 時間も早いので、間ノ岳に行く希望者はと聞くと男性陣はみんないやだと、女性からは数人の希望者がいたが、そんなに少ないならいいかと、結局誰も行こうと言わなかった。
 時間が早いとはいえ、冷え切った体、これから出かければ帰りは4時頃になる。怖いのは夕方のカミナリ、3000Mの稜線でカミナリに会うことの怖さを説明した。それに低体温症、それも怖い。

 2日間も急登を登ってきて、後2時間で間ノ岳とは、なんとももったいないが、また今度来ますよと。そうと決まれば着替えて濡れた衣類を乾燥室に。本来なら絶景を楽しめる山小屋で雨こそ降っていないけどガスで視界ゼロの窓を見つめながらビールを飲み始めたのでした。

 この日は我々のために9人用の小部屋が用意されていたのに、12人の女性では3人が大部屋になると、それなら全員が大部屋でいいと、でもこの日も布団は一人一枚、結局夕食時には80人くらいの宿泊者になったようだ。おそらくこの山荘でもキャンセルはなかったのではないか。
 雨でも決行する、それがBクラスだ。明日こそ晴れてくれと。夕食後はみんな早めに寝たのでした。
北岳山荘まで後少し 山荘はゆったり部屋 山荘の夕食
  
≪三日目≫
 朝は曇りだった。

 小屋の前の土手を登ると仙丈ヶ岳、間ノ岳、そして北岳も望めた。

 仙丈のとなりの甲斐駒ケ岳だけが見えなかった。
朝食
仙丈ヶ岳
北岳 間ノ岳

 朝食後に出発、歩きだしてすぐにガスが出てきた。でも雨はない。この日は景色が望めないなら八本歯のコル経由と決めていた。
 二年前の会山行でも、そのルートをとったが、下山には使わないほうがいいと言われているルート、でもそれはすれ違いに危険度が増すだけ、朝早い時間帯なら、ここまで登って来る健客者はいないだろうと、慎重に降りれば危険なところはない。ただ高所恐怖症の人は怖いかも、でもアルプスにこんなところまだまだたくさんある。
 Bクラスなら絶対大丈夫だと、みんなに説明して、そのルートをとったのでした。もちろんそれは前日に決めていました。
さあ、もうすぐガスが出ます。   ハイマツ帯を歩く、後方が北岳山荘   釣り尾根分岐に向かう

 痩せた岩場をトラバースする。本来ならお花畑のすごいところ、この時期はもう終っている。
 鎖や板の道、ロープを使って北岳山頂からのルートとの交差点に来た。ここでみんなにストックの収納を指示して岩のゴロゴロする斜面を下る。緩やかな下りなので三点確保は必要ない。
 その先から始まる小さな梯子の連続、ここが急斜面だ。下を見てはいけない。でも手すりがしっかりしていて怖がらなければ問題はない。ガスで下が見えないのでみんな平気なよう。その梯子が連続する。
  
 やがて八本場のコルに到着、目の前に八本歯の頭が見える。いかにも危険な所、「え、あそこを登るのですか。」と「いいえ、ここから左に折れるのです。」でも梯子はまだまだ続く。 
 八本場のコルに向かう  岩場のトラバース  岩場の下り
八本歯のコルへは手強い道です  八本歯のコル手前  八本歯のコル付近

 まもなく梯子が終わろうとしていたころ若い女性が単独で登って来た。この時間にここまで来るとはすごい健客だ、美人は強い、そして怖い。気をつけないと。
 梯子が全部終わって休憩、そこからはすぐ横にバットレスが望めた。下には二俣のバイオトイレが見えていて、もう30分もすれば着くだろうと、でも急斜面の下り、石がゴロゴロして滑りやすい。結局コースタイム通りの一時間を要した。

 二俣でトイレ休憩、ここからいやになるほど長く続く河原の道を歩く。川の左から右に、再び左にと歩きにくい石のゴロゴロした道だ。もちろん川の横断にはりっぱな橋が掛けられている。
左俣コースのガレ場を下る(幾つかの渡渉あり)  
 大樺沢二股付近  大樺沢を下る 

 長い下りが終わって樹林帯に入ると広河原が近くなる。
 来るとき渡った吊橋を渡る直前にケータイが鳴った。予約していたタクシーからだった。「今、吊橋を渡るところです。後5分で到着します。」そしてタクシーに乗り芦安まで帰ってきたのでした。
 タクシーの運転手が「明日は台風のため芦安広河原間は通行止めになります。」「え、台風はもう近くまで来ているのですか。」と危機一髪の会山行だった。

 芦安でお風呂と食事を取り、バスの中で「北岳、来てよかったですか。中止のほうがよかったですか。」と聞いてみるとみんな来てよかったと。これでリーダーはクビにならないかもと安堵したのでした。  
インフォメーションセンターに無事帰着 
 それにしてもみんなタフだ。急登、急下りの連続する北岳、登り切ったその顔に満足感が出ていたのでした。
   今度は天気のいい日にまた北岳に登りましょう。でもその質問には誰もいい返事がありませんでした。今度は晴れるリーダーがいいのでしょう。でも楽しかったと言っていただけたのはありがたいことでした。
 きびしい山をみんなほんとうにご苦労様でした。私も今回の山行は山に行く前から疲れ切った、そんな山行でした。