会山行紀行文 2016年
 3月29日(火)
晴れ後曇り
(からまつだけ)
唐松岳
2696m
参加者 (紀行文) 2216 S/K
2名
(男性2名) (写真) 2216 S/K
≪コースタイム≫
自宅=駐車場(6:30-6:45)…ゴンドラリフト乗り場(7:05-7:50)≒八方池山荘(8:40-9:00)…丸山ケルン(11:20)…唐松岳頂上山荘(12:10)
…唐松岳(12:40-13:00)…唐松岳頂上山荘(13:20-13:40)…丸山ケルン(14:20)…八方池山荘(15:30-15:45)≒ゴンドラリフト乗り場(16:15)
…駐車場(16:30-16:50)=自宅
≪紀行文≫
〜〜〜来年も、この山を、この時期に登りたい〜〜〜

 長野県大町市に住む先輩を誘って、二年ぶりに雪の唐松岳を登る。
 過去に強風で撤退したことがあるため、登山日は風速に注意をして「晴れのち曇り、気温−6℃、風速10m/s」の日を選ぶ。

 新潟市から糸魚川まで高速道路を走り6時30分に駐車場に到着、身支度を整えゴンドラ乗り場まで歩くがゲレンデの雪が少ないことに驚く。
 ゴンドラ乗り場で先輩と合流、今日はスキー大会でゴンドラが30分早く運転し、リフトも登山者が多いため早く動かすとのこと、幸先が良い。

 ゴンドラと2本のリフトを乗り継いで標高1830mの八方池山荘前へ。
 山荘に登山届を出し、アイゼンを装着して、快晴の空の下温かい日差しを浴びながら9時に出発。
 リフトの最終便は16時10分、それまでに戻らないとゲレンデを歩いて下りることになる。
 先に早々と出発した10人程の登山者が、既に八方山ケルン手前の坂を登っている。

 八方山ケルンを越えると、「北アルプスに来た!」と実感する景色が出迎えてくれる。
 正面にこれから辿る八方尾根と目指す唐松岳、右に白馬三山、左に鹿島槍ヶ岳と五竜岳・・・雪化粧した後立山連峰が輝いている。
 特に五竜岳と鹿島槍ヶ岳の鮮やかさに目を魅かれる。
八方山ケルンを越えると後立山連峰の山々が現れる ひときわ鮮やかに輝く五竜岳(右)と鹿島槍ヶ岳
正面に八方尾根、右に唐松岳と不帰の嶮(3,2,1峰)、天狗の頭、左に五竜岳と鹿島槍ケ岳 
樹林帯を通って左の急坂を登る ダケカンバの樹々が青空に映える

 青空と太陽が身も心も軽くさせ、締まった雪面を晴れやかな気分で歩く、しかし、丸山ケルンまでの3つの急坂でぺースが大きく落ちる。
 体が高度に順化しないのか息苦しい、歳か?鍛え方が足りないのか?喘いでいる内に、どんどん先行者との距離が離れる。

 11時20分中間地点の丸山ケルン(2430m)に到着、風が強くなったためアウターを着る。
 ここから唐松岳までは急斜面の狭い尾根が続くため、ストックからピッケルに切り替え、集中力を高める。
 いつの間にか空に薄い雲がかかり始め、裏側でまだ見えない剱岳が雲の中に入っているのでは?と心配になる。
 剱岳を拝めない唐松岳なんて・・・肉の入っていないカレーのようなものだ。
丸山ケルンへ最後の急坂を上る 丸山ケルンの先に白馬三山を望む 山頂に向かって登山者が雪面を登る
先行する登山者が唐松岳頂上山荘への急斜面を登る 唐松頂上山荘の上からの眺望、山荘左に牛首と五竜岳

 唐松岳頂上山荘へのルートは踏み固められ立派なトレースがついているが、直ぐに心拍数が上がってしまい中々前に進まない。
 早々と下山してきた登山者から「まだ剱が見えますよ、頑張って」と励まされ、立ち止まって呼吸を整え、小刻みに高度を上げ山荘の上に出る。

 お目当ての剱岳が「岩と雪の殿堂」の名にふさわしい峻険な姿を現す、ここで絶景度が1ランクアップするが、景色は山頂で楽しもうと休まず唐松岳に向かう。
 山頂直下で下りてくる登山者達に道を譲られ励まされ、「ありがとう」ゼイゼイ、「ありがとう」ハアハア言いながら、体を頂上に運び上る。
唐松岳の山頂に繋がる稜線、右は不帰の嶮(3,2峰) 唐松岳山頂より(左から)薬師岳、立山、剱岳、毛勝山を望む
 山頂より(左から)五竜岳、後方槍ケ岳、鷲羽岳、水晶岳、薬師岳、立山、剱岳

 12時40分「やった」と声を吐きながら標高2696mの唐松岳のてっぺんに立つ、そして、ゆっくり視界360度の大展望を愛でる。
 一番大きな五竜岳の後方に槍ヶ岳、そこから右方向に水晶岳、薬師岳、立山、剱岳・・・名峰がズラリと並ぶ。
 振り向けば手前の不帰の嶮から白馬岳まで稜線が伸び、右後方に焼山、火打山、妙高山、高妻山が連なる。
 白い絶景が疲れを一気に吹き飛ばしてくれる。
山頂より(手前から)不帰の嶮、白馬鑓、(後方左から)焼山、火打山、妙高山、高妻山

 至福の時間はあっという間に過ぎ、後ろ髪を引っ張られながら13時に唐松岳頂上山荘へ下る。
 風速が約15m/s位まで強まる中、下り始めでアイゼンの爪を引っ掛けてヒヤリとし、急がず慎重に足を運ぶ。
 鞍部から唐松岳頂上山荘への登り返しで再びハアハア、ゼイゼイ言いながら山荘上部へ、風の避けられる場所で水と食べ物を口に入れる。

 先に来ていた男女3人のグループが隣で何か始める・・・?
 なんということでしょう、こんな場所でコタツに入っているではありませんか!
 天板の上にはミカンまで置いてある・・・「温まっていきませんか」と誘われ、奇想天外な楽しみ方に大笑いする。
2620mに、なんとこたつが登場 左に切れ落ち斜面の尾根を慎重に下る 丸山ケルンに向けて急坂を下る
五竜岳と鹿島槍岳の西側斜面に陽が当たる 第2ケルン付近から天狗の頭を見上げる

 13時40分に八方池山荘に向けて急斜面を下るが、裏側は全く風がなくナイフエッジに近い稜線も落ち着いて通過する。
 40分で丸山ケルンまで下り、この調子ならリフトの最終便に十分間にあうと安堵する。
 歩きをのんびりモードに切り替え、写真を撮りながらゆっくり高度を下げる。
 陽の傾きが徐々に増し、モノクロへ変化して行く山の景色に、何度も立ち止まりそして振り返る。
 15時30分八方池山荘前に到着、山頂でもう少しゆっくりできたなどと話しながらアイゼンを外す。

 高速ゴンドラの中、窓から遠ざかって行く後立山連峰を観ながら充実感に満たされてゆく。
 「来年もまたこの時期に登りましょう」そう先輩にお願いし、新潟への帰路についた。