会山行紀行文 2016年
 3月16日(水)
曇り
(あさくさだけ)
浅草岳
1586m
参加者 (紀行文) 2216 S/K
単独
(男性1名) (写真) 2216 S/K
≪コースタイム≫
自宅=除雪端(6:15)…白くずれ沢橋(6:25)…825m付近の尾根への取りつき(7:20)…嘉平与ノボッチ(9:55)…前岳(10:20)
…浅草岳(10:40−11:10)…前岳(11:35、途中休憩10分)…嘉平与ノボッチ(12:05、途中休憩10分)
…825m付近の尾根への取りつき(13:15)…白くずれ沢橋(14:00)…除雪端(14:10)=自宅
≪紀行文≫
〜〜〜曇り空でも雪の浅草岳は素晴らしかった〜〜〜

 昨年の4月に初めて登った雪の浅草岳、山頂からの白い眺望を拝みたいと、天気予報「晴れ」の日に出かける。
 5時45分に到着した大自然館前の除雪端では、既に4人の若者がBCスキーの支度をしている。
 身支度を整え、ワカン、アイゼン、ピッケルを積んで歩き出す、白くずれ沢橋の手前を右に曲がり、冬スキーのコースを進む。

 昨年、ルート取りに迷って時間をロスした670m付近を、GPSと前日についたと思われるスキー跡に助けられながら進み、
 見覚えのある825m付近の尾根への取りつきに到着する。
 見事なブナの樹が立ち並ぶ斜面を登って尾根に出る、そこから先は左側下方にヤチマナ沢を見ながら尾根筋を辿る。

 風当たりが強くて固くなった斜面を避け、雪が浅く溜った場所を選びながらツボ足で登る。
 時期が昨年より1ヶ月半早いため、積雪の量が多くて藪がない(迂回のための急斜面のトラバースがない)こと、気温が低くて発汗が少ない
ことで、昨年より楽に登ることができている。
杉に囲まれた冬スキーのコースを進む 振り返ると朝日を浴びた黒姫山(右)と守門岳
大きなブナの樹が立ち並ぶ斜面を登る 遠方に米山(右)と黒姫山を望む

 後方から白く大きな守門岳に励まされながら高度を上げる、空に薄く雲がかかっているが視界は良く、米山や黒姫山がハッキリと観える。
 第一目標にしていた嘉平与ノボッチの上に出ている太陽の周りに大きな輪が出来ている。なんだろう?
 後で調べると、雲を形成する氷晶の中を太陽の光が通り抜ける際に発生するハロ現象、日暈(ひがさ)だと知る。

 嘉平与ノボッチの登り1340m付近で、吹き溜まった雪に足がズボ、ズボ入り出しワカンを履く。
 ここで後ろから登って来た単独の男性に先を譲る。
初めて見たハロ現象(日暈:ひがさ) 第一目標の嘉平与ノボッチが姿を現す
登って来た尾根の奥には、堂々とした守門岳 シュカブラの上を歩いて前岳を登る
嘉平与ノボッチから一端鞍部へ下る 復路で撮影した嘉平与ノボッチの雪庇 風で雪が舞う斜面を登る

 強くなった風が尾根を走り、足元の雪が舞う。先行する男性が立ち止まって地吹雪を凌ぐ姿に緊張感を覚える。
 風が歩行に影響をおよぼさないこと、足元がワカンで確保できることを確認して、焦らず一歩一歩、前進する。

 嘉平与ノボッチから雪庇に注意しながら一端鞍部まで下り、登り返して前岳を越えると一気に展望が開ける。
 白い雪を被って黒い大岩壁が一層凄みを増した鬼ケ面山が圧倒的な迫力で迫る、その後ろに白く染まった毛猛山、その後方に白銀の越後三山。そして、未丈ケ岳、荒沢岳・・・白い絶景に息をのむ。
 足元にできた大きなシュカブラの先には、寒々とした冬色の田子倉湖と南会津の山々。
手前が北岳、鬼ケ面山、南岳の大岩壁、その後ろに毛猛山と未丈ヶ岳、さらに後方に越後三山と荒沢岳
大きなシュカブラの後方に田子倉湖と南会津の山々 浅草岳の山頂から続く稜線の奥に真っ白な飯豊連峰

 浅草岳の山頂に目を向ければ、白い稜線が定規で斜め線を引いたように長く伸び、その奥に純白の飯豊連峰。
 非日常的なパノラマを目の前にして、足に杭を打ち込まれように、動くことが出来ない。
 同じような写真を何枚も撮りまくり、興奮を少し落ちつかせてから山頂に向かう。

 先行していた単独の男性と山頂手前ですれ違い、1585mの浅草岳の山頂に一人立つ。
 視界を遮る樹木のほとんどが雪の下になっているため、山頂は視界360度の展望台。
 天気予報では気温−3℃、風速10m/s、保温性の高い下着を一枚多く着ているため寒さはさほど感じないが、風が冷たくてフードは外せない。
 素晴らしい眺望というご馳走を沢山頂いたためか空腹は感じないが、下山に備えてパンとスポーツ飲料を口に入れる。
浅草岳の山頂は視界360度の展望台 田子倉湖、南会津の山々の右後方に尾瀬燧ケ岳、日光白根山

 2人連れ、4人連れと次々にBCスキーヤーが山頂にやって来たため、山頂を譲り下りることにする。
 下山は同じ道を戻るが、正面に守門岳、右に粟ケ岳、矢筈岳、御神楽岳、飯豊連峰、左に米山、火打山、妙高山を観ながらゆっくり下る。
 その中で、一番の存在感を示しているのは、やはり純白の飯豊連峰。
粟ケ岳、矢筈岳、御神楽岳と川内山塊を一望に望む、後方には純白の飯豊連峰

 次回来る時のためにルートを頭に入れながら高度を下げる、雪が緩んだためワカンのまま除雪端まで歩く。
 登山者は私を含めて2人、BCスキーヤ―が11人、静かな雪の浅草岳を楽しむことが出来た。
 着替えをしている間に、赤コーラを除雪の雪壁に突き刺して十分に冷し、そして、喉に流し込む「うまい!」

 天気予報が外れて終日「曇り空」だったが、今日の天候だから出会うことできた魅力的な浅草岳が幾つもあった。
 快晴でなくても、その日出会った山との時間は、二度と巡って来ない、だから、その時間を大切にして山を楽しむ。
 そんなことを教えてくれた浅草岳に感謝しながら帰路についた。
スケールの大きな景色の中を登山者が一人進む