個人山行紀行文 12.08.11日(土)
曇り後雨
大源太川七ツ小屋裏沢
七つ小屋山・シシゴヤノ頭
1675m
  1473m 
参加者5名
(男5)

(紀行文) 1854 M/T
(写真) 1862 Y/I
≪コースタイム≫
塩沢アジト前泊=大源太山登山口(駐車P、6:25)…入渓(7:10)…七ツ小屋裏沢出合(7:40)…3:1出合(12:50)…七ツ小屋山直下稜線(15:30)…謙信ゆかりの道分岐(16:20)…シシゴヤノ頭(17:20)…登山口(19:30)=石打ユングパルナス入浴=新潟(23:00)
≪紀行文≫
 危険だし、この歳で今さらと皆が敬遠する“沢登り”に何故か嵌ってしまう。
 同じ様な馬鹿がもう一人居て、「上信越の谷」なる本を開いて“初級マーク”付の沢から初めてもう6年になるだろうか。
 角田山のカッタン岩でロープワークのイロハを復習、スーパー爺ちゃん伊藤博を仲間に引きずり込み、3人で谷川周辺の谷へ毎週のように出かけた。
 巻機山の米子沢や、平ケ岳・恋ノ岐沢では会の仲間数人も加わって小さなグループが自然に発生した。
 皆気持ちが純真、身の程知らずの自称「楽山ワルガキクラブ」の誕生だ。

 今回は、どこの沢に入るかいろいろ出て議論白熱したが、初挑戦の“大源太川七ツ小屋裏沢”に決定。
 メンバーは玉野、石井、風間、坂井に加えて70歳を過ぎてこの道に飛び込んだドクター広野を加えての5人だった。何せ皆、若葉マーク、紅葉マーク付の御仁である。何があるか分からない。とにかく、早立ちとヘッデン覚悟は当たり前。6時には出発すべく近くのアジトに前泊した。

 しばらくは、大源太山の登山道を進むが、2回目の渡渉点が入渓ポイントである。気を引き締め、準備を整え入渓した。およそ25分で北沢本谷と七ツ小屋裏沢の分岐点だ。本谷の方へは2回入っているが、七ツ小屋裏沢は初めて、いよいよワクワクの新ルートに足を踏み込むことになる。

 最初の難関は、4mのチョックストーン。ものの本によれば「ショルダーで突破」とか「水量が多くて巻いてロープで降りた」とか、なかなか手強そう。ところがラッキー、水量が少ないので今回はショルダーで行けそうだ。
 しかし、そう甘くは無い、最後は必死こいてヘッドで越えた。
←(写真左)
 大源太山登山道を約25分、2つ目の渡渉点から入渓しました。ここは大源太川北沢本谷ですが、気を引き締めて出発しました。
→(写真右)
 しばらく進むと、第一の難関6m四条滝が現れました。しかし今日は水流が少なく、難なく左側を攀じ登り通過できました。本来なら轟々と水が流れ落ち難攻不落の滝なのです。
←(写真左)
 入渓から約30分、1:1の二股、ここから本谷を離れ右に舵を取ります。いよいよ七ツ小屋裏沢に踏み込むのです。その前に入念なチェックと休憩。
→(写真右)
 小さな滝がいくつもいくつも続くゴルジュ帯、釜も結構深く胸まで浸かって対岸の岩に取りついた。これぞ沢登りの醍醐味だ。
←(写真左)
 二人で協力して手掛かりの無い岩に攀じ登る。これをショルダーと呼ぶのですが、最後はついにヘルメットに足を置いてようやくにして通過。この後シュリンゲを出して皆を引き上げました。
→(写真右)
 6m3段の滝はとても越えられず、安全を期し、左岸を大きく高巻いた。最後は30mロープを使っての懸垂下降。滝上に降り立ち、にっこり笑ってザイルを畳む隊長玉野。

 ホッとする間もなく、次は最大の難所、12mの滝。
 ガレ場を落石に注意して登り、ブッシュを掴んで巻き始める。かなりの傾斜、緊張の連続だ。
 草付きのトラバースはもっとも危険なため、それを避け、さらに高めに巻いた。まさに体力勝負だ。最後は30mのロープを使って懸垂下降、2ピッチで滝上に降りた。時間も食ったが、すごい経験で、今後の沢歩きの自信につながった。まあ、時間はかかったが、草付きを避けたのは正解だったと思う。スピードよりも安全第一だ。

 ここの通過で大分気持ちに余裕が出、次々に現れる滝を直登したり巻いたり、途中では支点の取りかたやロープの扱いなどを学習しながらの楽しい楽しい遡行だった。
←(写真左)
 厳しそうに見えますが、こんな滝はもうお茶の子さいさい、余裕で越えていきます。
→(写真右)
 12m滝が見えてきました。ここは右側を難なく攻略。でも、まだまだ滝は続きます。
←(写真左)
 僅かな落差でも厳しい所が現れます。安全第一、シュリンゲでサポート。
→(写真右)
 右岸左岸とルートを探しながらどんどん進みます。しかし、安全確保と疲労の蓄積で時間は相当費やしています
←(写真左)
 こんな釜は泳いだ方が早いと思うのですが。夏とは言え水冷たく寒いのですよ。
→(写真右)
 9m2条の滝、さすがにここは登れません。右岸を小さく巻きました。

 最後は、谷川連峰名物の夕立の中、腕力頼みのクマザサ漕ぎは、いささか堪えるも、ついに七ツ小屋山直下の谷川主稜線に到達した。
 皆ズブ濡れになりながら固い握手を交わしたのは言うまでもない。

 下山は、蓬峠手前の分岐からシシゴヤノ頭経由を取った。もう登山道なのだからルンルンと思いきや、疲れた身体に3時間半の下りは実にきつい。
 薄暗くなった登山道を、最後はヘッデンつけて午後7時半にようやく登山口に戻ることができた。
 駐車場には自分等の車1台だけがポツンと残っていた。
←(写真左)
 源頭部に出ましたが、この辺から雨が降り出しました。クマザサの藪でそれほど煩わしくもありませんでしたが、距離が長いのと、滑るので悪戦苦闘、本当に疲れました。後方のピークがシシゴヤノ頭。
→(写真右)
 やっとのことで稜線に突き上げました。武能岳、茂倉岳、一ノ倉岳、谷川岳がうっすらと見えていました。これから長い道のりを下山、日没との勝負です。
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←(写真左)
 雨の晴れ間、振り返ると七ツ小屋山が見えました。ヨツバヒヨドリも微笑んでくれました。稜線ははや秋の気配。
→(写真右)
 上越のマッターホルン“大源太山”こちらから見るのが一番雄々しく立派です。本谷を遡った場合はあの山に突き上げます。
歩いた軌跡

 まだまだ暑い沢日和、次は巻機山の米子沢、その次は仙ノ倉山ニシゼンを計画中だ。

 思いは尽きない。

←(GPS軌道)
 沢や谷はGPS電波が途切れがちです。それでも何とか歩いた軌跡は分かります。

 13時間に及ぶ苦闘の証、疲れましたが、沢の醍醐味を味わった楽しい1日でした。


                                   終わり