ここからは6名で交代のラッセルだ。急斜面では4駆にギアチェンジ、ストックで雪をかき身体全体で圧し、膝を使って押し込み、
ようやく一歩を踏み出すの繰り返し。
14:00本当はもっと前進したかったのだが幕営ポイントを考えテント設置にはいる。冬山では行動そのものよりもいかに寒さ等から
身を守るかの生活技術が一層要求される。本格的な雪上生活に不慣れな坂井氏にとっては辛くも有意義な体験だったのでは。
酒の量を控えれば次期リーダーか?と巷の声。まあテントの中では酒を控えるどころではない。まず身体の中から暖を。
焼酎、ウイスキーを適量(?)たしなむ事は立派な登山技術なのだ。
降り止まぬ雪の中、頻尿と寒さに苦しみながら長い夜を過ごす。
8日7:10発、前日と同じ牛歩の前進が続く。予報通り天候は回復しない。「簡単には登らせないぞ」とばかり標高が上がるにつれ
気温も下がり風雪も強まる。手指先がしびれ「これくらいはあたりまえ」と口ではほざくも心中少しづつ弱気の虫が騒ぎ出す。
「どうせ稜線までは無理か」風雪のなか、わかんをアイゼンに履き替える辛さも脳裏をよぎる。「もう十分(?)堪能した・・・・」と。
晴れていればエブリ差岳や鉾立峰が美しく望めるであろう枯松山先のコルで行動食を口に放り込みながら作戦会議。
ちょうど1名のわかんの紐が切れた(たいしたことではないのだが)事をきっかけに大勢の気持ちも切れた様。「下山」を決める。
「決断が早い」「勇気ある撤退だ」へ理屈はなんとでもついてくる。
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