| ハイマツの茂る山頂からの360度の大パノラマに感動。午前中は霞んで見えた
 安達太良連峰が眼前にクッキリと姿を現している。
 登山の目的は人によってそれぞれ違う。私が今回の山行に加えていただいたのは、
 一切経山・東吾妻山から安達太良山を見ることだった。
 それはいまから50年位前から思い抱いていたことである。
 安達太良山は、高村光太郎の詩集『智恵子抄』(昭和16年初版)に詠われて
 その名は人々の記憶にとどまるところとなった。
 私は眼前に見える安達太良山を遠望しながら、『智恵子抄』に詠われた
 “阿多多羅山の山の上に”ある、智恵子のほんとの空を感慨深く静かに見ていた。
 そして自然に“あどけない話”を心の中でくちずさんでいた。
 
 | 智恵子は東京に空がないという、 ほんとの空が見たいという。
 私は驚いて空を見る。
 (中略)
 智恵子は遠くを見ながら言う、
 阿多多羅山の山の上に
 毎日出ている青い空が
 智恵子のほんとの空だという。
 あどけない空の話である。
 |