会山行紀行文 12.05.26日(土)

晴時々曇り
一切経山・東吾妻山
1949m  1975m
参加者52名
(男20・女32)

(紀行文2117 Y/N
(写真)2070 S/F 1626 I/K
≪コースタイム≫
  新潟駅南口(6:00)=浄土平(8:35-8:55)…酸ヶ平小屋(9:35)…一切経山(10:20-10:40)…鎌沼(11:15)…姥ヶ原(11:35)…東吾妻山(12:25-13:15)
  …姥ヶ原(13:45)…浄土平(14:40-15:00)=ヴィライナワシロ(15:45-16:30)=新潟駅南口(18:45)
≪紀行文≫
                       〜〜〜一切経山・東吾妻山から安達太良山を望む〜〜〜

 いつの時もそうであるが、山行の数日前から天気が気になって落ち着かないものである。天気予報は、「明日26日は全国的に気温が上がって
夏日になるところが多いでしょう」と言っていた。山行の準備を終えた前日の25日昼過ぎ、天気状況を確認するため浄土平ビジターセンターに
電話する。レンジャーの話では「いま小雨が降っているが明日は晴れるでしょう」という嬉しい返事が返ってきた。

 一切経山・東吾妻山の『山行計画書』が送られてきた。まず目を通したところは、注意事項・特記事項であった。
 この欄を見ると不安になっていたものが解消されるからである。
 さらにリーダーから5月19日付メールで事前連絡が届いていた。「いよいよあと1週間となりました。皆様方との山行を楽しみにしています」の
書き出しで……昨日(18日)下見に行ってきたことが、特に安全面について部分的に注意を要するところがあること、また必須の装備につて書い
てあった。この的確な、しかも気配りの行き届いた情報は、多少不安をもって山行にのぞむ者にとって安心感を与えてくれるもので大変ありがた
いと思っている。

 山行日26日(土)午前6時晴れ、気温14度。さわやかな五月晴れの朝を大型バスは新潟駅南口を出発。総勢52名の大山行である。
 新潟県旧東蒲原辺りから会津盆地にかけて気温が上昇してきたせいか、山間にはガスがかかり水墨画のような景色がつづく。
 磐梯山SAを過ぎると車窓の左方向に、ガスが晴れ上がった空間に大噴火で山頂部が吹き飛んだ磐梯山が荒々しい山容を見せている。
 磐梯朝日国立公園内の吾妻山、安達太良山、磐梯山は、那須火山帯に属しており、さまざまな火山地形が見られるところだ。
 バスは、磐越自動車道猪苗代磐梯高原ICより国道115号線土湯峠を経て磐梯吾妻スカイライン浄土平駐車場に到着。
 磐梯吾妻スカイライン料金所ゲートは無人で開放されたままになっていた。
 今年も磐梯吾妻スカイラインの通行料と浄土平駐車場の駐車料金は無料のようだ。

 晴れ上がった空からは陽光が射し込み今日は絶好の登山日和である。さあ登山の準備に取り掛かろう。それぞれ準備が終わった者から
浄土平ビジターセンター脇に集合。班ごとに点呼を終え、ミーティングが済むといよいよ今日の山行のスタートだ。
 周りを巡らすと、大口を開けたような噴火口が特徴的な吾妻小富士、今も白煙を上げ活動を続ける一切経山、なだらかな山容の東吾妻山が
すぐ近くに見渡せる。
浄土平駐車場で準備(後方が吾妻小富士) ビジターセンターから観た一切経山方向 登山道入口から観た東吾妻山(右後ろ)

 浄土平ビジターセンター横の案内板から5分ほど歩くと一切経山と東吾妻山の分岐点がある。右に折れて残雪のある斜面を通って酸ヶ平
避難小屋に向かう。
一切経山への分岐点 酸ヶ平への登り斜面(未だ残雪が多い) 雪原の先に酸ヶ平の避難小屋が見えた

 ここで一息入れてから一切経山の尾根筋に取り付き、ガレ場が多い歩きにくい稜線の登山道を足元に注意しながら登る。
 途中の登山道からは硫黄の臭いが漂ってくる。山頂附近に近くなるにしたがって風が強くなって寒さを感じる。もう一息で山頂だ。
 山頂に到着すると各人防寒対策を済ませ休憩タイムである。
酸ヶ平、鎌沼、東吾妻を背にガレ場を登る 山頂が見えて来た! あまりにも寒く急ぎ防寒対策

 残雪の無い広々とした山頂からの展望は素晴らしく、東の方角には晴れ上がった空に磐梯山・西吾妻連峰、西の方角には雲で霞む
安達太良連峰をはじめ大パノラマを展望することができた。
 大きく深呼吸をする。なんと空気がおいしいことか。山頂直下には“魔女の瞳”とも呼ばれる吾妻・五色沼が俯瞰でき神秘的なコバルトブルー
の湖面が素晴らしい。沼の周囲にはまだ残雪があるが、新緑の季節ははじまっている。
山頂から西吾妻山方面を観る 五色沼(魔女の瞳)吸い込まれそうな美しいコバルトブルー

 班ごとに頂上で記念写真の撮影が終わるといよいよ下りだ。
 頂上のゆるやかな傾斜を下るとガレ場の登山道に変わり、転倒しないよう慎重に歩く。眼下に酸ヶ平・鎌沼を見下ろし、眼前には東吾妻山を
見て下る。酸ヶ平と浄土平の分岐からは、木道が鎌沼・姥ヶ原方向に続いている。
 一切経山・東吾妻山とも展望に恵まれ、高山植物も楽しむことができる代表的な福島の山である。木道のある湿原・草原台地は雪解けが
終わったばかりの景観を呈しており、花たちはやっと厳しい環境から目覚めようと準備をしているようだ。
 リーダーの話では今年は雪が多かったためお花畑は例年より3週間ほど遅いということだった。
山頂からガレ場を下る(安達太良が遠くに) 酸ヶ平を目指して下る(前方に東吾妻山) 鎌沼と水面に写る東吾妻山

 木道をどんどん歩いて行くと、注意事項に書いてあった鎌沼の残雪が沼面に切れ落ちている危険なところにとうとう来た。
 山行最大の難所をみんなで眺めていると、向こう側から単独行の男性が歩いてくる。我ら52名の視線を一身に受けて歩き切った男性は
どんな気分だったろうか。安全第1の我が軍団は、危険を避け残雪の急斜面を迂回することにした。
 全員無事に通過の後は、木道を姥ヶ原に向かって進み東吾妻山の登山口を目指す。
鎌沼の残雪面を登る(後方一切経山) 残雪面を迂回し鎌沼へ下る 東吾妻山登山口の姥ヶ原十字路

 姥ヶ原登山口からうっとうしい感じの展望のない樹林帯に入った。東吾妻山の登山道は石ころや木の根っこなどが出ており歩きづらい。
 その上、登山路は雪解け水で一部沢のような流れになっている。これは沢登りだ。結構水量も多いのでメール連絡にあったように長靴が
正解であった。残雪で夏道が不明なところが多いためリーダーは、下山の際の目印に赤い布を枝に縛りながら登っていた。
 沢登り、残雪路歩き、その間の枝漕ぎを繰り返しながら登る。

 しばらく登ると森林限界のハイマツ帯に変わる、周囲の視界は抜群に明るくなった。もうすぐ東吾妻山頂に到着だ。
夏道が残雪に隠れて見えない樹林帯 ハイマツ帯に出ると頂上まで後少し 広い頂上360度遮るものはない

 ハイマツの茂る山頂からの360度の大パノラマに感動。午前中は霞んで見えた
安達太良連峰が眼前にクッキリと姿を現している。
 登山の目的は人によってそれぞれ違う。私が今回の山行に加えていただいたのは、
一切経山・東吾妻山から安達太良山を見ることだった。
 それはいまから50年位前から思い抱いていたことである。
 安達太良山は、高村光太郎の詩集『智恵子抄』(昭和16年初版)に詠われて
その名は人々の記憶にとどまるところとなった。
 私は眼前に見える安達太良山を遠望しながら、『智恵子抄』に詠われた
“阿多多羅山の山の上に”ある、智恵子のほんとの空を感慨深く静かに見ていた。
 そして自然に“あどけない話”を心の中でくちずさんでいた。 
   
 智恵子は東京に空がないという、
 ほんとの空が見たいという。
 私は驚いて空を見る。
     (中略)
 智恵子は遠くを見ながら言う、
 阿多多羅山の山の上に
 毎日出ている青い空が
 智恵子のほんとの空だという。
 あどけない空の話である。
山頂では青空の下360度の大パノラマを眺めながら、待ちに待った楽しい食事である。誰かが上空を見上げて、今日はあたったネと一言。
 食事が終わると記念写真の撮影だ。東吾妻山頂の標識を真ん中に総勢52人の笑顔が揃う。 
少し風があった為、ハイマツの影で風を避け陣取り、楽しい昼食タイム

 帰還準備ができると、あとは姥ヶ原登山口を目指して悪戦苦闘して登ってきた悪路を一気に下るだけだ。
 あまり経験したことのない悪路だっただけにいつもの下りとちょっと様子が違う。とにかく赤い布の目印をたよりに慎重に下る。
 姥ヶ原登山口を右に折れるとあと40分で浄土平に着く。

 途中残雪斜面が2か所ある。後ろを振り向けば東吾妻山、前方には吾妻小富士、前方左手には一切経山が見える。
 遮るものが何もないので眺望を楽しみながら、写真撮影をしながら、ルンルン気分でみなそれぞれの下山である。
 残雪の斜面でまた記念写真の撮影となる。白煙を上げる一切経山をバックに総勢52人の勇者が一線に並びパチッ。
 写真を見る楽しみが多くなって感謝している。全員無事に浄土平に到着、みな満足感に浸っているようだ。 
東吾妻から姥ヶ原を経て浄土平に向かう雪の斜面で(後方が一切経山、噴煙が出ています)

 バスは一路新潟に向けて出発。
 青春というのは、心の若さである。何歳であっても、誰でも「青春時代」を生きたいと思っているものは大勢いるはずだ。
 いつまでも感動を求め、いつまでも青春の真っただ中にいることが私たちにはできるのだ。
 とくに山々をこよなく愛する人たちには。一生感動。一生青春。

 的確なリーダーシップを発揮され、52名の大山行を無事果たされたリーダー、役割分担を無事努められた大勢の方々に感謝します。
 
 そして楽しく山行ができたメンバーのみなさんにありがとう。
東吾妻山山頂での集合写真
一切経山山頂での班単位写真(後方に残雪の西吾妻山が見えています)