個人山行紀行文 | 11.09.25(日) 曇り後晴れ |
巻機山(登川・米子沢) 沢登り |
参加者 3名(男) |
1862 Y/ I |
≪コースタイム≫ 桜坂駐車場手前6:26~堰堤6:40~ゴーロ帯終端7:10~3段40m滝・高巻き7:35頃~スダレ状12m滝9:00頃~上流部大ナメ10:35頃より~源頭部水場・昼食(12:10-13:16)~避難小屋13:20~六合目展望台14:23~五合目展望台14:52~井戸尾根登山口15:25~駐車場所15:30 |
=== 美渓探訪_巻機山米子沢 === 「どっか沢に行きてえな」權ノ神岳からの下山中に誰かがつぶやいた。紅葉にはまだ少し早いものの、真夏の暑さは一段落している。「今頃の沢は寒いんじゃない?」あまり乗り気でない返事が返ってくる。 しかし本来なら、この日、甲武信ヶ岳の笛吹川に行く予定だったのだ。それが台風襲来日本列島大雨三昧のおかげでお流れになってしまった。代わりに出かけたのが180度も知名度が違う宝蔵山・權ノ神岳だった。 テンションは上がらなかったが、やはりどこか沢に未練が残っていたのは確か。「そうだ、紅葉を見ながら沢歩きするなんてのを聞いたことがある、まだ大丈夫だ、米子沢にでも行くか」てな具合で越後の美渓、いや全国的にも名を馳せている天下の美渓・巻機山米子沢に行くことに即決した。紅葉にはまだ少し早いものの、その分身体を冷やさずに済むだろう。 ところが、急に決まったため行けるのは3人だけだった。笛吹川は5人手を上げていたのだが、それぞれ都合があるのだから仕方ない。勝手知ったる仲間なので、ごちゃごちゃした計画は不要、待ち合わせ場所と時間、ロープは誰が持って行くのかの確認で十分だった。 かくして翌日の午後3時に新潟ふるさと村の駐車場で合流して、湯沢手前の前線基地、秘密のアジトに転がり込んだ。前夜祭はささやかにとは思っていたが、ついつい3人とも嫌いでないものだから、結構進んでしまった。それでもちゃんとその日の内には寝ましたよ。 4時半の目覚ましの音に、しばらくはどこに居るかも思い出せず、頭の中は、ただ「うるせーな」と思うのみ。しかし次の瞬間“米子沢”が脳裏を走り、身体が瞬間的に反応していた。 朝食、昼食は途中のコンビニで調達。六日町に向って車を転がして行ったが、辺りは濃い霧に包まれていた。ヘッドライトを煌々と照らしてみても、僅かに10m先の路面が見える程度。何にも見えない中、信号機の青や赤の色だけが遠目に浮かび上がっていた。 「霧が立っているのは天気が良くなる証拠」、不安を吹き飛ばすようにつぶやいた。ところが、清水集落が近づいてくる頃いっぺんに視界が広がった。どうやら霧を突き抜けたようであった。しかし、空にはまだ厚い雲が覆っていた。「沢は寒いだろうな、お日様出てくれ」と祈るのみ。 桜坂の手前の駐車場で、そこが米子沢への林道の入口なので、おにぎりをほおばりながら沢道具を身に付けた。いつも感じるのだが、ハーネスを付けメットを被ると何故か身が引き締まる。期待と同時に緊張感に包まれる不思議な気持ちである。 米子沢は巻機山を源頭にして、水平距離約4Km、標高差1260mの明るいナメ床やナメ滝が続くきれいな沢だ。さらに、源頭域では巻機山の頂きまで草原が広がっており、藪を漕がずに沢を詰められる気持ちの良い沢なのだ。 最初こそ、水もほとんど見えない(伏流水)ゴーロ帯を30分ほど歩かなければならないが、それを過ぎれば、中流から上流まで見事な美渓が続いている。まさに名渓、人気があるのも頷ける。 しかし、沢のグレードは2級、いわゆる初級の沢となっているのに、水線ぎりぎりに登ったり、ゴルジュのヘツリ(かなりの高度感)があったり、大高巻きがあったりで、決してルンルン気分という訳にはいかなかった。かなりしんどい沢歩きだった。 常々思うのだが沢歩きはまさに全身運動、あらゆる筋肉を駆使して登らなければならない。しかしそれ故に、沢を詰め、稜線に出た時、あるいは源頭部に着いた時にはこの上ない充実感を味わい、嬉しくなる。まして、今日の沢は、こんなにきれいな沢、気持ちの良い沢、いつになく達成感を感じた。 源頭部の巻機山頂稜部は、開けた明るい草原である。まだ紅葉には早かったけれど、草紅葉が少し始まっており、僅かに秋の気配を漂わせていた。さあ、これから長い下山が待っている。次はいつ来れるだろう。(おわり) ≪写真集≫
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