個人山行紀行文 11.07.16(土)
~17日(日)
晴れ
飯豊山・2105m
(ダイグラ尾根)
参加者
6名(男6)
1862 Y/ I

≪コースタイム≫ 飯豊本山・2105m 御西岳・2013m 烏帽子岳・2018m 北股岳・2025m 
            門内岳:1887m 地神山:1850m
(1日目)
 新潟300=天狗平(430455)~桧山沢吊橋540~休場ノ峰935~千本峰・昼食(1030-11:45)~宝珠山1435~飯豊本山1739~御西岳1902御西小屋19:08(泊)

(
2日目)

 御西小屋545~天狗の庭628~烏帽子岳826~梅花皮小屋917~北股岳・昼食(1000-1045)~門内岳1135~扇ノ地紙1205~地神北峰1254~丸森峰1335~天狗平・入浴(1628-1730)新潟19:30
 

 今年の梅雨明けは早かった。そして、梅雨が明けると同時に連日30℃を超す猛暑である。この時期に飯豊ダイグラ尾根を登るのは少しやばいかなとは思ったが、意気盛んな猛者連、予定通り行こうということで決行した。
 目的の山は飯豊本山、しかも、俗称“切歯尾根”と呼ばれている長大なダイグラ尾根を登り、御西小屋に泊まり、翌日、主稜線を歩いて丸森尾根を下るという1泊2日の遠大な計画だった。
 歩く総延長距離は優に30Kmを超え、累積上昇高は3000mを超えるというもの。行動時間は、計画書の段階で、1日目11時間半、2日目10時間、トータル21時間半というものであった。

 メンバーは男6人、今回の平均年齢は若干若くなって63.3歳であった。しかし、若いとは言え、巷で見ればいいおじいちゃん連、身の程知らぬ輩と言われるても仕方がない。

 でも、この辺で悪あがきするのも一興、つらい山ほど魅力もいっぱいあるはずと信じ込んでいる単純な脳細胞の持ち主達なのである。自称“ワルガキ隊”と言う。

 ところがそのメンバーたるや、ダイグラ尾根初めてという者が4人、途中までは登ったことがあるという者が1人、通しで歩いた経験があるのはたった1人という構成であった。はてさてどうなることやら・・・・。



歩いた軌跡(タイムは超スローペースです)
1日目 2日目 合 計
(歩いた距離) 約16Km 約17Km 約33Km
累積上昇量) 約2220m 約930m 約3150m
総所要時間(休憩含)
 約14H13分  約10H43  約24H56分

 これは、事後気が付いたことであるが、この難コースと思っていた飯豊本山大周回を、過去、会山行でも行われていたのである。いつのことかは自分には分からないが、O屋リーダーの下、女性7名、男性9名の編成で行われていた。 会員の皆さんはご存知と思うが、佐藤れい子著「越後百山」の御西岳の項にそれは載っていた。こんな山行を会山行で行っていたとは!、正直驚いた。楽山会もすごい山の会なのだと改めて思い知らされた。さてさて、男6人の珍道中は如何に。

 集合は“道の駅豊栄”3:15としていた。長丁場なので少しでも早く歩き出したいという気持ちは強いものの、グループで行動する場合は、せいぜいこのぐらいがやっと、前夜の深酒は厳禁、十分に睡眠をとって参加のことという注意書きは果たして守られたのかは不明だが、全員時間前に着いていた。まだ暗い日本海東北道、ルート113、山形県道15号、260号線を2台の車でひた走る。昼間なら、たっぷり2時間はかかる道程を、何と1時間半で天狗平に到着した。

左)山沢の吊橋を通過、これを渡り終えるといよいよダイグラ尾根に取り付きます。
中)宝珠山を通過中、宝珠山は幾つもの峰で構成されています。ダイグラ尾根の核心部、きつかった。先の小雪渓で身体を冷やし、冷たい雪で咽を潤しました。
右)息をするのもしんどいくらいのよれよれの身体に、ニッコウキスゲやヒメサユリそれにシラネアオイなどの可憐なお花達が励ましてくれました。正直、写真を撮るのもしんどかった。

 共通装備を確認、入念に準備をし、登山届けを提出して5時前に歩き始めた。計画では5時半出発であったので30分早い。爽やかな朝の空気を吸いながら、温身平を快調に過ぎ、桧山沢の吊橋まで順調に進んだ。ここまでは全くの余裕であった。
 ところが、吊橋を渡るや否や急登の連続、1泊装備の荷の重さが肩に食い込んだ。しかも、風が無い上に灼熱の陽光が木々の隙間を縫って容赦なく照りつける。水は沢山(3~4L)持ってきたもののどんどん消費する。疲労はどんどん蓄積していった。

 這う這うの体で休場ノ峰に到着したが、そこからは、これから歩くダイグラの尾根が見えた。それはうんざりするほどの長く酷いアップダウンの続く尾根であった。出るのは溜息ばかり。水は相当消費しており先行き心配であったが、ところどころに見えている雪渓が頼りである。一人だったら、この辺で恐らくダウン、引き返していたかも知れない。しかし、仲間がいることはありがたいもので、互いに励ましあいながら前進し続けた。

左)宝珠山の最後の峰、あれを越せばいよいよ飯豊本山です。鞭を入れろ、脚を動かせ。
中) 西の方向には主稜線が延びている。雲の辺りは北股岳、明日歩く道なれど、その前に本山越えねばままなりません。右)南西方向、本山から御西岳に続く稜線。後方に見えるのは大日岳です。今回、大日方面はパス。

 間もなく千本峰に到着。この辺から、元気な者とそうでない者との差がはっきりと現われて来た。進む速度は極端に落ちてきた。30分毎の休憩が20分毎に、やがて15分毎と段々短くなっていった。朝の余裕もたちどころに吹っ飛んでしまった。道の脇に雪渓が現われると、誰言うとも無く雪の上に身体を投げ出し、頭に雪を乗せ、さらには持ってきた水筒に雪を詰めて冷たい水で咽を潤した。雪がきれい汚い、放射能がどうのこうのはこの際どうでも良かった。それよりもリフレッシュできたことが嬉しかった。

左) 宝珠山を通過、いよいよ飯豊本山にアタックします。しかし、一旦鞍部まで下がって登り返すその道程の長いこと、元気隊は2時間で越えましたが、よれよれ4人組みは3時間かかりました。歩き始めてからここまで9時間半を要しました。疲労も限界です。
中) 御前坂を喘ぎ喘ぎ登ります。足は重く、遅々として進みません。後方は越えてきた宝珠山。
右) 17時30分、本山の標識が目の前です。頑張れ頑張れ!そう言うしかありません。予定ではとっくに御西小屋に着いている時刻です。先行した2人はもう着いたでしょうか。

 千本峰から宝珠山までは、岩稜帯のアップダウンが延々と続く、しかしここまで来たらもう引き返すことも出来ない。とにかく前進あるのみ、「ファイトイッパ~ツ!」の声が飛ぶ。ただ、そんな厳しい山にも、いや厳しい山だからこそなのか、ミヤマクルマバナ、ヒメサユリ、シラネアオイ、ニッコウキスゲなどの沢山のお花達が目を楽しませてくれた。
 頭上には群青色の空が広がり、対岸には雲が多いながらも飯豊主稜線が見えていた。そこから落ち込む沢や谷にはまだまだたっぷりの残雪が続いていた。今、飯豊の真っ只中を登っているのだと言う実感が否応なしに湧いて来た。


 宝珠山まで来れば飯豊本山は指呼の先、と言いたいところなれど、視界に映る飯豊本山の何と遠いことか。誰しももう声も出なかった。ここで作戦変更。元気者2人は予定通りのペースで進み、混雑するであろう御西小屋の寝場所を確保すること。よれよれ4人組みはマイペースで、たとえ暗くなっても御西小屋まで辿り着く事というものであった。

左) 飯豊本山の頂上でしばしの休憩を取り、雄大な展望を楽しみ、御西へのなだらかな稜線を行きます。陽はかなり傾き、飯豊の中でも有数なお花畑に濃い影を落としていました。前方に大日岳、御西小屋は見えません。
中) コバイケイソウ咲く草月平、ニッコウキスゲやチングルマ、アオノツガザクラ、コイワカガミ、ハクサンチドリ、オヤマノエンドウ、ミヤマキンポウゲそれにハクサンフウロなどなど数え切れないほどのお花が咲き誇っていました。
右) 19時8分、御西小屋に到着、先行した2人がにこやかに迎えてくれました。小屋番のおじさんも大分心配してくれたそうですが、時間はかかりましたが全員無事に1日目の行程を歩き通しました。小屋は混んでいましたので外で乾杯、楽しい夕餉の一時を過しました。

 飯豊本山への最後の登り、ここを御前坂と言うのだそうだが、きつかった。頂上の標識、三角点に着いた時には本当に涙が出るほど嬉しかった。メンバーの中には飯豊山塊は今回が初めてという者が一人、1回目石転び沢2回目ダイグラ尾根と言う者が一人居た。初めての人達をよくもまあとんでもないルートに引きずり込んだものである。ごめんね。
 
 この先まだまだ道中は長いのですが、無事ダイグラを登りきりましたので、レポはここまでとします。
この後の珍道中は写真で綴ります。以下の写真をご覧ください。
               

左) 明けて17日、霧の中を出発しました。残念ながらご来光は拝めませんでしたが、陽が昇ればガスは晴れるでしょう。稜線漫歩が楽しめそうです。
中) 天狗の庭を行く一行、いつもは閑散としている稜線ですが、3連休とあって、行き交う人の姿も結構ありました。ニッコウキスゲ咲く稜線、素敵でした。
右)烏帽子岳手前、くさいぐら尾根と交わる辺りから見た飯豊本山と長く延びるダイグラの尾根。昨日、あそこを歩いたのだと思うと感慨も一入でした。
左) 手前、烏帽子岳、右が梅花皮岳、その間にちょこんと見えるのが北股岳です。
中)6月12日に登った石転び沢の雪渓です。1ヶ月経ちましたので雪渓も大分痩せて来ていました。ゴマ粒を捲いたように登って来る人の姿が見えました。

右) 北股岳山頂脇に咲いていたミヤマクルマバナ、目立たないお花ですが、昨日の登りの途中からずっと我々を励ましてくれました。本当に本当にありがとう。
左) 北股岳山頂。この姿、コメント要りませんね。
中)門内岳の祠目指して進みます。楽しいギルダ原のはずなのですが、お花を愛でる余裕はもう消え失せていました。
右)
飯豊の星、イイデリンドウです。飯豊固有種、ここでしか見れません。どうぞご覧あれ! 稜線の登山道脇にぽつぽつと咲いていました。自分は初めて見ました。飯豊に来た甲斐がありました。
地神を後に下山開始 飯豊山荘前に無事下山
 
12:54地神北峰通過、丸森尾根下山開始です。早く降りたい、しかし名残惜しいと言った心境でした。でも丸森尾根の下山も過酷なのですよね。

 16:28飯豊山荘前の登山口に無事下山、極限まで疲れていましたけれど、下山の時間はそれほど遅くありませんでした。山荘の温泉でゆっくりと汗を流し帰路につきました。
 


長い長い二日間の行程を歩き切って、疲れはピークでしたが、気持ちは充実感と満足感でいっぱいでした。(おわり)