会山行紀行文 2008.08.03-05 NO59
表銀座〜槍ヶ岳・3180m 展望の表銀座から、東鎌尾根経由槍ヶ岳へ
1396 H/K

「今さら槍ヶ岳について語るのも愚かなくらい、周知の山である」と、深田久弥さんは書いている。確かに山を登る人で槍ヶ岳を知らない人はいないでしょう。だれもが「いつかはあの先端に立ちたい!」と思う。
 しかしこの山はそう簡単には登れない。今回私達の山行の予定歩行時間は1日目が約8時間、2日目が約8時間30分、3日目が約6時間と言うハードな計画なのです。いずれにしても簡単には登れない。それだけに「いつかはあの先端に立ちたい」と強く思うのだ。

 私が初めて「槍ヶ岳」を意識したのは「新潟楽山会」に入会したての平成8年の夏に、今は亡き山川敏幸さんより穂高岳縦走に連れて行ってもらい、その際に北穂から見た「槍ヶ岳」の雄姿を見た時です。それ以来種々の山の本を見る度に「いつかはあの槍の穂先の先端に立ちたい」と言う願いを強く持っていました。
 しかしその願いはなかなか叶わずにおりましたが、この度、会山行で表銀座コースの案内があり、早速参加申し込みしました。

1日目・8月3日 晴れ】
 新潟駅南口に早朝の4時集合。交通の手段がないので妻を拝み落としてなんとか間に合う。バスで一路中房温泉登山口へ。近づくにつれ前方に「有明山」が目に飛び込んで来た。この山は昨年の7月の暑い中、前の晩の「酒」と「寝不足」で難儀して登った事を思い出した。中房温泉登山口には数多くの車が止まっていた。
  
  (中房温泉登山口)                  (合戦尾根・スイカが名物)

 さあ、いよいよ「憧れの槍ヶ岳」に出発です。登山口からはいきなり急登が始まりますが、登山道は良く整備されていて、第1ベンチ・第2ベンチ・第3ベンチ・富士見ベンチと程よい間隔でお休み所があり、歩きにくい所にはハシゴが設置されていた。しかし歩き始めると直ぐに汗が噴出して来た。標高1500m有るのにこの暑さ、私自身普段はクーラーの効いた所で仕事をしているので、非常に堪えた。
 汗を拭き拭きようやく「合戦小屋」に辿り着く。8等分が800円のスイカの美味しかった事。一呼吸の後に又歩を進める。ここからは比較的ゆるやかな勾配になる。両脇には“ミヤマリンドウ”や“トリカブト”など高山植物も目に付く。又、目的地の槍ヶ岳が顔を出し始めた。

  
  (燕山荘より燕岳を望む)                 (トリカブト)

 お〜い 未だですか? 燕岳は? 小高い山の上にようやく燕山荘が見えて来た。白っぽい花崗岩と花崗岩砂礫、ハイマツ緑のコントラストが美しい燕岳だ。約4時間要した。ここで昼食だ。元気の良い人はザックを置いて燕岳頂上へ。以前登った事のある人は燕山荘前で休憩。先程まで暑くて汗ビッショリでしたが、さすがは標高2,763mともなると、汗が少し引いてきたようです。

  
  (雄大な景色を眺めながら表銀座を行く)      (青空のもと、元気一杯!)

 燕山荘脇に咲いていた“コマクサ”を愛でながら、今夜の宿泊地「大天荘」に向かう。若干のアップダウンを繰り返しながら、しばらくはゆるやかな下りの道が続く。それもつかの間で大天井岳に向かう登りになる。しかし巻き道がありましたが四苦八苦していると元気の良い先発隊のYさんとHさんが後続隊を迎えに来てくれた。ようやく大天井荘前に出る。そこでガスに掛かった「槍ヶ岳」が見えたので、カメラを向けるとサァッと隠れてしまう。

  
  (槍ヶ岳遠望)                        (今夜の宿・大天荘)

本日の宿泊地「大天荘」に到着し、荷物を置くと同時に渇ききった喉を潤すため「反省会」と称してお疲れ様の“イッパイ”おいしかった。テレビでは夏の甲子園で新潟代表「県央工業高校」の中継中で一喜一憂。しかし我々の応援も空しく惜敗した。その後夕食となり、山小屋としてはマァーマァーのご馳走か。

 夕食後明日の天気予報を確認すると、午前中は曇り、午後は雨との事。こればかりは……。
今夜の私達のねぐらは運良く2階の大部屋の貸切りであった。食後は布団に潜りこんだ。時間的にはまだ早いが、他にすることがなければ仕方がない。9時の消灯迄は自由なオシャベリでした。(消灯後もオシャベリがあったのかな?)

【2日目・8月4日 雨後晴れ】
 グッスリ眠れたのかどうか判らないが、今日はいよいよ「憧れの槍ヶ岳」に登れるのだ

朝4時の起床。5時10分朝食。外に出て見るとガスっているし、予報は良くないので雨具を着て予定より1時間早く山小屋を出発する。昨日の疲れもないようだ。雨は降ったり、止んだり、強く降ったり、弱くなったりの繰り返しなので休憩時にそれなりの支度をする。(不思議なもので着れば晴れるし、脱げば降るし……)大天荘から40分でヒュッテ大天井、小休止の後再出発。途中黄色の“ウサギギク”やかわいい“ハクサンフウロ”等の高山植物に癒されながらも「ヒュッテ西岳」に着く。雨は激しかったがヒュッテの中は狭いらしく中に入れてもらえず、外で立ち休憩。

  
  (ヒュッテ大天井)                      (いよいよ危険地帯へ)

雨の中、「大槍ヒュッテ」に向かう。勾配の少ないゆるやかな下りが続いたが、水俣乗越からは岩場で、鎖を頼りに慎重に足を運ぶ。ハシゴや鎖場の連続。冷や汗と緊張の連続でした。途中で昼食でしたが、雨の中だったので食欲は湧かなかった。
 東鎌尾根を通過し大槍ヒュッテで一休みした後、この日の宿泊地である「憧れの槍ヶ岳」である「槍ヶ岳山荘」目指して出発。少しバテ気味でしたが、目で確認できる所にいるので張り切っていたのだが、岩また岩という足場の悪い連続でなかなか進まない。下の方に大きなU字形の谷間があり殺生ヒュッテが見える。その谷間の中に幾筋もの行列。上高地方面からの登山者だと言う。

  
   (槍の穂先も見えだして・・・)               (殺生ヒュッテが見えます)

右手に「槍ヶ岳」が聳え立っているのですが、ガスが掛かってハッキリ見えないし、瞬間的な晴れ間を待ってシャッターを切るが上手く撮れない。
 14時30分ようやく「槍ヶ岳山荘」に着。時間も有るし、明日の天候は保証されないと言う事で予定通り「槍ヶ岳頂上に登る」とリーダーより告げられ、疲れを忘れて“サァー登ろう”。距離は短いが、足下は切れ落ちている。鎖やハシゴ・鉄釘など。登り専用のコースを確実な3点確保で安全第一と慎重に登る。途中で交通整理をしてもらう程の登る人下る人の混雑でした。

頂上直下のハシゴは垂直で不気味な怖さを感じた。15時15分頂上。狭くて15人位立てばいっぱいだ。とにかく「憧れの槍ヶ岳頂上」にタッチ出来ました。感激!!。小さな祠の前で記念の写真を撮ってもらう。3180m。日本で5番目の高さです。感激している間もなく、直ぐに下山しなければいけません。登りも慎重でしたが、下りもより慎重です。

  
  (頂上直下の岩場)                   (頂上直下の岩場より槍ヶ岳山荘を望む)

下山後全員で記念撮影する。「槍ヶ岳山荘」で宿泊。幸い今日も楽山会で一部屋を貸切り確保出来た。今晩も夕食前に「反省会」と称してお疲れ様の“イッパイ”。いろいろな話が出て盛り上がる。
 その最中に「槍がクッキリ見えるよ」との情報でカメラを持って外へ。情報通り「槍ヶ岳」がクッキリ、スッキリ槍の穂先まで見えるではないか。皆さん感激です。様々な角度から撮影をしている。小槍もスッキリ見える。本当に感激、いつまでも眺めていたい至福の一時でした。その後、日暮れと共に赤く染まった夕焼けが眼下に見え、雄大な槍ヶ岳とのコントラストが素晴らしい。又黒い影とそれを取り囲む虹。手を上げると影も手を上げるブロッケン現象も見られた。

    
  (槍ヶ岳山荘前より穂先)         (リーダーと記念撮影)

6時より夕食。皆さん目的を果たしているせいか、ご機嫌で食事&お喋りです。楽しい一時でした。夕食後は部屋に入り、8時45分の消灯で満足気分な2日目を終え就寝する。

3日目・8月5日 曇り】
 4時起床。
グッスリ眠れました。5時過ぎの朝食も楽山会は特別に用意されており助かりました。平日なのに外人を含め大変混雑しておりました。

  
  (飛騨乗越を下ります)                  (どの花も大きい) 

今日は天気の心配もなし、下りだけなので気が楽です。しかしその下りで怪我をする人が多いので要注意だ。6時出発。山荘近くには多くのテント泊の若者が居た。飛騨乗越を一気に下る。両脇には“チシマギキョウ”や“チングルマ”“シャクナゲ”“コマクサ”等々数多くの高山植物に出合えた。Oリーダーのご配慮で撮影タイムもあった。ドンドン下って9時10分に「槍平小屋」に到着。樹林の中に静かな雰囲気で広々とした良い所です。ここでのんびり昼食です。しかしリーダーより「ここで下りは半分だよ」と聞かされてガックリ。

  

  

 気を取り直して「滝谷出合」〜「白出沢出合」まで下る。今度は「白出沢出合」より黙々と林道歩きになる。こんな広い道路なのに何故車を入れないのだろう!と不思議に思うが、その辺は観光面等の思惑でしょうか? 約1時間30分歩いてようやくバスの待つ「新穂高温泉」に着いた。3日間共にしたザックと登山靴を脱いでバスに乗り込んだ。

 「新穂高温泉」より少し走った近くの温泉で3日間の汗を洗い落とし、髭を剃って「ご苦労様」のイッパイを生ビールで乾杯! 
 バスの中でも皆さん満足感に浸り、和気藹々と飲んで歌って楽しい雰囲気で“アッ”と言う間に20時40分新潟駅南に帰って来ました。「憧れの槍ヶ岳」に登って来ました。
Oリーダーそして参加者の皆さん、3日間”想い出づくり”をありがとうございました。素晴らしい山行でした。お世話になりました。       (おわり)